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ここで笑えよ、子どもたち! 落語家泣かせの「学校寄席」(立川笑二)

NIKKEI STYLE 10/10(月) 7:50配信

 師匠と兄弟子の吉笑とともに連載させていただいている、まくら投げ企画11周目。今回の師匠からのお題は「芸術」。

 落語家には小学校、中学校、高校へと行き、芸術鑑賞の授業で生徒さんたちに向けて落語をする「学校寄席」と呼ばれる仕事がある。

 しかし、普段はお金を払って時間を割いて、わざわざ落語を聞きに来てくださっているお客様を相手に仕事をしているため、そうではない環境の学校寄席という仕事はなかなか普段どおりにはいかない難しさがある。

 そもそも、生徒たちのほとんどは落語に興味が一切ない。芸術鑑賞という授業の一環として、半ば無理やり聞かされているという状況だ。

 そして、落語をする側である私自身も、落語に興味がない人に興味を持ってもらえるほどの実力がない。

 なので学校寄席という仕事は基本的にみなが不幸になる可能性が高い仕事なのだ(少なくとも私の場合は)。

 それでも、生徒たちの中に一人でも私の落語を聞いて、落語という演芸に興味を持つ人がいてほしいし、そうさせる芸人になりたいと思うので依頼があると方々の学校へ行って落語をやらせていただいている。

ちなみに、小学生、中学生、高校生の中でよく笑ってくれるのは、意外に思うかもしれないが圧倒的に小学生だ。

 小学生という生き物は、とにかく笑う。こっちがやりにくくなるぐらい笑う。しかし、彼らがなぜ笑っているのかは全く理解ができない。学年が下がれば下がるほど顕著にそれが表れる。

 「となりの空き地に囲いができたよ」「へぇー」

 ドッカーーーーン!

 この小噺(こばなし)で信じられないぐらいの爆笑が起きる。普段、もっと楽しいことないの?と聞きたくなるぐらい笑う。

 「ハトがなにか落としていったよ」「ふーん」

 シーーーーーーン

 これはウケない。なぜだ! システムは全く一緒だろう! 何が気にいらないんだ! まったく理解できない。そのほかにも私が小学校の学校寄席に行くときに必ずやる桃太郎の小噺というのがある。

 「むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。おじいさんは山に芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯にいきました。おばあさんが川で洗濯をしているとドンブラコドンブラコと大きなイモが流れてきました」

 まず、この「イモ」と言った時点で第1回目の爆笑がドカーンと起きる。

 「おばあさんはこの大きなイモを家に持ち帰り、大きなイモを一人でぜんぶ食べてしまいました」

 ここで第2回目の爆笑、ドカーーン!

 「おばあさん、そんなに大きなイモを一人で全部食べてしまったので、大きなオナラを一発、ブーッとやってしまいました」

 この「オナラをブー」のフレーズでは、気でも触れたのかと思うぐらい笑う。

 ドッカーーーン!

 「このオナラの音があまりにも大きくて山で働いている、おじいさんにも聞こえました。おじいさん、芝を刈らずに、くさかった」

 シーーーーーーン

 なーぜーだー! 逆にここしか笑うところはないだろう!!! 学校寄席、本当に難しい。今回はそんな学校寄席で私が一番つらい思いをしたときの話。11投目! えいっ!

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最終更新:10/10(月) 7:50

NIKKEI STYLE

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