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南シナ海の中国主権否定(その1)

中央公論 10/10(月) 9:30配信

☆南シナ海の中国主権否定

旬なニュースの当事者を招き、その核心に迫る報道番組「深層NEWS」。読売新聞のベテラン記者で、キャスターを務める吉田清久編集委員、近藤和行編集委員の両氏が、番組では伝えきれなかったニュースの深層に迫る。

 オランダ・ハーグの仲裁裁判所は、南シナ海をほぼ囲い込む中国主張の「九段線」に法的根拠はない、などとする判決を示した。中国が主張してきた主権が否定されたことで、南シナ海、そして東シナ海をめぐる状況はどうなるのか、キャスター二氏が語り合った。

◆中国の戦略的失敗
「中国の権益に重要な九段線について、非常に踏み込んだ判決が出て中国も驚いているのでは」=飯田将史・防衛研究所主任研究官(七月十二日)
「国際法の世界では完全な敗北です。しかもこの判断は最終的なもので拘束力がある。中国が国際法上の主張をすることについて大きなダメージ」=宮家邦彦・元中国公使(七月十三日)
「中国にとっては戦略的失敗。仲裁裁判に最初からかかわらないとしたことで、勝手に裁判が進んでしまって、判決だけが出てくる。それを重く受け止められることに持ち込まれたのは外交的ミス。外交ミスに加えて宣伝ミスと見ている」=富坂聰・拓殖大学教授(七月十九日)
「中国では、最初からこれは偏ったものという見方だったが、完全に一方的なフィリピン側の主張を認める判断を出したということで、それはやはり受け入れられない。この判断そのものが、中国を孤立させ、包囲網を作るためのものと見られている」=朱建栄・東洋学園大学教授(七月十三日)

近藤 中国にとって不利な判断が示されることはある程度予想されていましたが、九段線の違法性についてここまで踏み込んだのは意外でした。排他的経済水域についても、フィリピンに有利な判断が示されました。
吉田 力による現状変更は、ロシアがウクライナで行ったことと同じ。中国はカンボジアやラオスなどを巻き込んで、主張を押し通そうとしていますが、国際社会のほとんどは冷ややかに見ています。中国の対応を喜んでいるのはロシアだけではないでしょうか。
◆今後の対応
「ウッディー島(西沙諸島)とファイアリークロス礁(南沙諸島)には三〇〇〇mの立派な滑走路ができている。この二点だと線。(スカボロー礁を加えると)南シナ海のど真ん中に三角形ができる。完全にこの一帯をおさえることができて、すべて自分の領土だからここに防空識別圏を設けるということまで言い出す」=伊藤俊幸・元海上自衛隊海将(七月十二日)
「中国から見れば、自分たちの主張は既存の海洋法秩序では認められないだろうと考えていて、だからこそ力で現状を変更していく。この考え方がある意味正しかったという認識を中国が持つ可能性がある。従って、力に依拠した現状変更をさらに進めていく」=飯田氏(七月十二日)
「九月までは非難を浴びることは避けたい。(中国がホスト国である)G20(主要二〇か国・地域首脳会議)があるから。これを失敗したら中国の面子は丸つぶれになる。裁定に関する非難を根本的に解決するには、フィリピンと合意してしまうこと。申し立てた国と合意したから他の国は口を出すなと言える」=小原凡司・東京財団研究員(七月十九日)
近藤 南シナ海は中国にとって極めて重要で、軍事戦略を完成させるためには、スカボロー礁の軍事要塞化が不可欠と考えています。言明している通り、仲裁裁判所の判決は無視するでしょうが、国際社会の反発は必至だと思います。当面おとなしくしている、という見方もありますが、逆にスカボロー礁の埋め立てを進めて既成事実化を急ぐかもしれない。外交的には、中国は経済協力を通じて密接な関係にあるカンボジアなどに働きかけ、すでに国際社会の分断を図る動きに出ています。
(了)(その2へ続く)
構成/読売新聞調査研究本部 福永聖二

最終更新:10/10(月) 9:30

中央公論

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