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言葉の掛け合わせでアイデアを生む、「マジックワード」思考法

Forbes JAPAN 10/10(月) 12:00配信

世の中、不謹慎叩きで溢れている。ネット空間は不謹慎発言の取り締まり部隊のような人々が目を光らせる。しかし、規制をしたがる風潮が、社会を窮屈にして、結果的に自由な発想を奪い、社会や職場からイノベーションやアイデアを殺す。そこでゲーム感覚で自由な発想を育てるツールを提案する。



泊まれる水族館をご存じですか。閉館後の水族館でゆっくり生き物の観察をしながら、夜は大水槽の前で泊まることができる人気ツアーのことです。新江ノ島水族館が2004年から開催しているこのツアーの案内を見ながらふと思いました。

「泊まれる」という言葉がつくだけで「水族館」の魅力がさらに広がってないか? ひょっとすると「泊まれる」という言葉には何か特別な力があるのかもしれない。実際、「泊まれる本屋」「泊まれる道の駅」「泊まれる学校」などなど、普段は泊まることのできない場所に泊まれるようにすることで新しいサービスが生まれています。

これまで既成概念の枠にはまり、考えることができなくなっていたことが、ある言葉がつくだけでアイデアが広がる。そんな魔法のような言葉がほかにも存在するのではないか。

電通総研Bチームで日々収集している1,000の事例や、広告のキャッチコピーなどを見直してみたところ、およそ200のマジックワードを発見しました。その200語の中から、企画に使いやすそうな言葉だけを厳選し100ワードに絞り込んでつくったのが、「マジックワードカード」です。

「マジックワードカード」の使い方
1. テーマを決める。
2. マジックワードカードを10枚ずつ配り、面白くなりそうなマジックワードを手札の中から1枚選ぶ。
3. 「せーの」で一斉にカードを出す。
4. それぞれ出したカードについて説明。
5. 付箋紙を使って、みんなでアイデアを肉付け。

ここで、そのマジックワードの一部を紹介しましょう。人工知能に関する話題が絶えない昨今。人工知能が進化すれば感情を持ったロボットが普通になるだろう。そんな事例から「感情を持った____」というマジックワードを採集しました。

これを先ほどの水族館にくっつけると、「感情を持った水族館」となります。魚の状態や来場者の態度によって水族館の照明や音楽など雰囲気が変わる水族館? ユーモラスに話しかけてくる水槽を備えた水族館? などなど、この言葉からアイデアを広げていくことができます。

ほかにも、小商いやスモールスタートなど小さいことに価値を見出す風潮から見出した「スモール_____」というワードから、複業やパラレルキャリアという働きかたのトレンドからヒントを得た「趣味と実益を兼ねた______」といった言葉まで、幅広い言葉を取り揃えました。
--{実際に機能するのか? いざ実践!}--
そうはいっても、マジックワードが本当に課題解決のために機能するのでしょうか。それを確かめたくて、これまで数回ワークショップを実践しました。先日は「NHKに集まる社会課題をマジックワードカードで解決する」と題し、14年に「アイスバケツチャレンジ」で有名になった難病「ALS」の解決をテーマにしたワークショップをアカデミーヒルズ六本木ライブラリーで開催。

NHKのディレクター小国士朗さんにご協力いただき、「ALS」「アイスバケツチャレンジ」「尊厳死」「アイトラッキング」などALSに関するキーワードを選定。その言葉とマジックワードを組み合わせてソリューションを考える、という内容です。

ALSという難しい問題をテーマにして盛り上がるのか? 私自身やってみるまで不安しかありませんでしたが、その心配は杞憂に終わりました。たとえばあるグループからは「恋する愛トラッキング」というアイデアが。アイトラッキングという技術やALSの認知を広げるために某プロデューサーに曲を書いてもらい、売り上げを寄付するというアイデアです。ほかにもVR技術をつかって、動けないALS患者の方に旅行体験をプレゼントする「旅するALS」といった企画も。

たった30分という時間でしたが普通に考えていてもなかなか生まれてこないアイデアがたくさん生まれました。クリエイティブジャンプが必要とされている難題に向き合わなければいけないとき、強制的に予想外の言葉と言葉を組み合わせるマジックワードは、発想の飛躍をサポートするジャンプ台になるのだなと実感しました。

当日は学生から経営者まで、年齢も職業もバラバラの人たちが集まりました。立場やバックグラウンドが違う人たちが同じテーブルを囲むときに、ゲーム感覚で楽しめるカードがあると議論が盛り上がることも実感。

「ブレストでは他人のアイデアに便乗OK!」と言われますが、ファシリテーションの良し悪しでうまく盛り上がらないこともありますよね。カードに付箋を貼りながらアイデアに肉付けしていくことで、アイデアの成長過程が記録されて、アイデアをふくらませやすいのも、このカードの特徴のひとつです。
--{アイデアが生まれる瞬間}--
言葉は子どもからお年寄りまで誰もが扱うことができる、アイデアのプロトタイピングツール。カードによってこれまで出会うことがなかった二つの要素が組み合わされることで、新しいアイデアが生まれる。それをみんなで育てながら、グルーヴ感が生まれていく。そんな熱気を感じたのでした。

ちなみにこのカード、一人で企画を考える際にも使えます。一枚一枚カードをめくりながら、出てきた言葉にそれってどういうこと?と自問自答しながら企画を深めていけば100の切り口のアイデアができる。仕事の効率化をはかるにも有効です。

ALSのような社会課題だけではありません。新人がいうことを聞かない。妻の機嫌が悪い。旦那がだらしない。お金がたまらない……生きていると大小様々な課題にぶつかります。言い換えるならたくさんのアイデアが求められます。

そんなときに、タロットカードをめくるような気分で、マジックワードカードをめくってみると新しいアイデアに出会える。生活を豊かにし、世界を平和にするにはアイデアが必要。マジックワードがその一助となれば幸いです。

電通総研Bチーム◎電通内でひっそりと活動を始めていたクリエイティブシンクタンク。「好奇心ファースト」を合言葉に、社内外の特任リサーチャー40人がそれぞれの得意分野を1人1ジャンル常にリサーチ。現在50のプロジェクトを支援している。平均年齢約35歳。

大山 徹◎電通総研Bチーム「Play」特任リサーチャー。「あそびから入ってみる」を自身のテーマとして、広告、ワークショップ、ゲームの開発など、幅広く楽しく活動中。

鳥巣智行◎電通総研Bチーム所属。ソフトバンク「Pepper」の会話システムや、森永製菓「おかしな自由研究」の商品開発を行う。長崎原爆の記憶を継承する。「Nagasaki Archive」の制作など平和もテーマに活動中。

電通総研 Bチーム

最終更新:10/10(月) 12:00

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