ここから本文です

苦戦続きの三菱重工、「国家」の看板を下ろしたら?

JBpress 10/10(月) 6:10配信

 「国家と共に」という理念を掲げ、日本のもの作りを支えてきた三菱重工が、同社の顔ともいえる事業で苦戦続きとなっている。

 祖業でもある造船事業において巨額損失を計上したことに加え、初の国産ジェット旅客機MRJは5度目の納入延期が検討されており、後がない状況に追い込まれた。同社の兄弟会社で、燃費改ざん問題を起こした三菱自動車は日産の傘下に入った今も、三菱重工の足を引っ張っている。客船事業の損失については、火災事故も併発していたことから、技術力の低下を懸念する声も上がる。

 しかし、同社の事業全体を見渡してみると、問題となっている事業を除けば、思いのほか好調である。皮肉なことに「国家」という看板を下ろせば、同社の経営はかなりラクになるというのが現実だ。

■ MRJは5度目の延期でもう後がない

 三菱重工の子会社で航空機の製造を担当する三菱航空機は、同社が開発中のジェット旅客機MRJについて、5度目となる納入延期の検討に入った。三菱航空機はこれまで4度、納入時期を延期しており、9月にはようやく試験拠点である米国の空港への移送に成功していた。しかし、量産にあたって設計の見直しが必要なことが明らかとなり、関係者には納入延期を通知したという。

 MRJは三菱重工グループが総力をあげて開発を行っている日本初の国産ジェット旅客機である。よく知られているように、日本は太平洋戦争の敗北によって、しばらくの間、航空機分野の研究・開発が禁止されていた。その後、政府主導で国産旅客機YS-11が開発され、約180機が生産されたが、残念ながらYS-11は事業としては成立しなかった。YS-11以降、日本の航空機産業は停滞したままの状態が続いてきたのである。

 日本の航空機産業の復活を掲げたMRJの開発には、政府も全面的な支援を行っていたが、開発は思いのほか難航。これまでに4回、スケジュールの延期が発表されており、初号機の納入は当初予定から5年遅れの2018年半ばとなっている。

 最大のライバルであるブラジルのエンブラエルが2020年に最新鋭機を投入する予定となっており、遅延がさらに1年を超える状況となった場合、エンブラエルと直接競争する形になる。エンブラエルは新規参入の三菱とは異なり、リージョナルジェットの分野で豊富な納入実績を持っている。これ以上、開発が遅延した場合、エンブラエルの存在がMRJの受注に影響してくることは確実だ。

 現在、MRJは400機ほどの受注を獲得しているが、そのうち半分はキャンセル可の契約といわれる。開発の遅延がなくても目標の1000機までには隔たりがあり、本格的に生産が始まっても、ビジネス的にはかなり苦しいだろう。

■ 航空機産業に押し寄せるコモディティ化の波

 見た目の派手さとは裏腹に、航空機製造のビジネスは、以前ほど儲かるビジネスではなくなっている。その理由は、他の産業と同様、この分野にもコモディティ化の波が押し寄せているからである。

 MRJは100万点以上の部品で構成されているが、自動車の部品点数が数万点であることを考えると、航空機というものの規模の大きさが分かる。かつては航空機を製造することができれば、その企業は高い付加価値を獲得することができた。しかし、航空機産業の分野は、近年、急速な勢いでコモディティ化が進んでおり、最終製品を作るメーカーの付加価値は低下している

 MRJは設計と組み立てを三菱が担当しているので、日の丸ジェットということになるが、使用されている部品のほとんどが外国製である。これは三菱特有の話ではなく、現在の航空機産業では、メガサプライヤーと呼ばれる大手の部品メーカーが、航空機の各ユニットを半完成品の状態まで作り上げ、完成機メーカーは最終組み立てだけを行うというのが主流となっている。

 完成機メーカーは、メガサプライヤーが提供するユニットを選択するだけになるので、独自の部品を使用する割合は低くなる。つまり、今の時代は、どのメーカーが航空機を作っても中身はほとんど同じであり、確保できる利益も限定的といえる。極論を言えば、パソコンメーカーに近い産業構造となりつつあるのだ。

1/3ページ

最終更新:10/10(月) 6:10

JBpress

記事提供社からのご案内(外部サイト)

JBpress PremiumはJBp
ressが提供する有料会員サービスです。
新たな機能や特典を次々ご提供する“進化
するコンテンツ・サービス”を目指します。

なぜ今? 首相主導の働き方改革