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日本の「クリスマス馬鹿騒ぎ」の起源は日露戦争の勝利だった!? 異教の祝祭が私たちの年中行事に

現代ビジネス 10/10(月) 12:01配信

 キリスト教徒ではない日本人は、いつからクリスマスの馬鹿騒ぎを始めたのか? その起源を求めて、コラムニスト堀井憲一郎氏がずんずん調べる。日本人とクリスマスの不思議な関係を解き明かす連載第11回。(第1回はこちらから http://gendai.ismedia.jp/articles/-/47056)

ロマンチックなクリスマスを夢見る乙女気分

 クリスマスを初めて取り上げた小説については『明治東京歳時記』という書籍に、その指摘がある。(槌田満文・著、青蛙書房、1968年刊)。

 「小説の中にクリスマスがとりあげられたのは「今日はしも都も鄙も統括(おしなべ)て皆楽しと歌ふなるクリスマスの事なれば、家も街(ちまた)も美麗(うる)はしく錦の列(つら)ねしそが中に一際目立つ門構え……」と記された木村曙『婦女の鑑』(明治22年)がもっとも早いものであろう」

 本当にもっとも早い小説か、定かではない。

 この時期より以前にクリスマスのことを描いた小説があるかもしれない。この記述から見るに、実際に丁寧に調べたわけではなく、印象としてこれがもっとも早いのではないか、とい軽い指摘のようである。ゆえに、「もっとも早くクリスマスを登場させた日本の小説のひとつ」とするのが穏当なところであろう。

 木村曙の『婦女の鑑』。明治22年だから1888年の作品である。

 木村曙は女流作家、というか少女作家である。明治4年生まれなので、このとき満で18、数えで19歳、その年齢で書いた作品となる。デビュー作ながら読売新聞に連載された。彼女の写真が残っているがすごい美人で、強いていま(2016年)で言えば、桐谷美玲というところだろうか(ただし既婚)。

 しかし、このデビューの翌年、1889年に若くして彼女は亡くなる。作品は『婦女の鑑』のほか数作。ほぼ、忘れ去られた明治初期の女流作家である(大きな図書館で探せば読めるレベル)。 

 この『婦女の鑑』のクリスマスシーンは、日本ではない。

 「一際目立つ門構え……」の引用の先の部分を続けると「家の建造も他に越えていと厳然く見えたるは、これぞ英国にて名も高きケンブリツヂの女子部なるニユーナムとこそは知られたり」となっている。イギリスでのクリスマスシーンなのである。

 木村曙は、東京女学校で学んだ才媛であり、才気煥発、本人は強く海外への留学を望んでいた。しかし父の強い反対にあい、断念している。そのおもいを託した作品がこの『婦女の鑑』である。

 主人公は13歳の少女、イギリスのケンブリッジ大学へ留学する。留学が決まるまで、少女小説らしい紆余曲折があるのだが(友だちの意地悪でいちど留学が中止になる)、横浜からの出航シーンの次は、もう冬のイギリスのクリスマス直前のシーンとなる。

 さすがに未体験のイギリスについて描くとなると、19歳の少女作家には具体的な風俗や風景を描き出すことはむずかしかったのだろう。そもそも文体にところどころ「候文」が用いられ、イギリス人カドリーンヌ嬢やヘレン嬢も〝ソウロウ文〟で話しているような小説である。

 当時の日本にとってイギリスはあまりにも遠い。リアルなイギリス生活として、日本からかろうじて想像できたのが〝楽しげなクリスマスの日〟だったようだ。

 いろいろと示唆的である。

 クリスマスを楽しむという行為は、日本人にとって「この日ぐらいは西洋人気分を味わう」という意味合いの祝祭であった、というふうに捉えられる。考えてみれば、いまでもそうである。

 「なんだか艶めかしさも感じる異人さんの宗教気分を、一日だけ軽くひたってみる」

 クリスマスは、そのための日本人の祭りということである。

 宗教的な部分は厳しく拒否しているからこそ行う祝祭、という意味合いを持ってきている。そもそも、何ともいえない後ろめたさが常につきまとっている。それが明治人にとってのクリスマスであり、きちんといまも継承されている気分だと言える。

 また、1880年代に欧米への留学を希望するような先端的な女子にとっては、クリスマスはすでのロマンチックな存在だったことがわかる。

 ロマンチックなクリスマスを夢見る乙女気分は、その後、百年を越えて日本人にまとわりついてくる。

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最終更新:10/10(月) 12:01

現代ビジネス

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