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東北被災地「巨大防潮堤」はいらない! 生活再建につながる土地利用とは?

週プレNEWS 10/10(月) 6:05配信

東北の太平洋側の海岸線、全長約400kmにわたり、巨大な防潮堤(ぼうちょうてい)の建設が進んでいる。

東日本大震災による津波で大きな被害を受けた人や町を、今後押し寄せるかもしれない津波から守るためだ。

ところが住民からは防潮堤の建設に不満の声が噴き出し、反対運動も起きている。一体、何が問題なのか? 取材を進めると、住民の意思に反して計画を進めようとする行政の姿勢が見えてきた。

(前編記事⇒『東北被災地「巨大防潮堤」は誰を守るのか? “メガ復興事業”に異論噴出!』)

* * *

そもそも岩手、宮城、福島の各自治体が防潮堤の高さにこだわるのは、「それが国の方針だから」(防潮堤計画に関わる自治体職員)。しかしその実、国は柔軟な姿勢を見せていると話すのは、東北の防潮堤問題を国会で繰り返し質問する宮城県選出の和田政宗参議院議員(日本のこころ)だ。

「県側は、国が当初まとめた方針を推し量り、背の高い防潮堤でないといけないと言います。しかし国は、整備計画は県に任せているとし、その姿勢は柔軟です。安倍総理も『被災直後から住民の意識も変わってきたため、見直しを自治体と相談しながらやる必要がある』と話している。ところが県は瑕疵(かし)があってはいけないという意識も手伝うのか、住民が計画の変更を要望しても一度決めたものとして見直そうとはしないのです」

和田氏は震災前程度の防潮堤を造ること自体は否定しないが、今の高さありきの計画には疑問を感じるという。

「人命最優先と言いながら、すでに高台移転済みの地区や道1本しかない場所に巨大な防潮堤を造っている。漁業や観光にも影響を与えてしまうものを造るのは予算の無駄といえないでしょうか」

では、国の方針を決めるベースとなった中央防災会議の「東北地方太平洋沖地震を教訓とした地震・津波対策に関する専門調査会」で座長を務めた河田惠昭(かわた・よしあき)関西大学特別任命教授はどう考えているのか。取材に応じた河田氏は、高さありきの防潮堤計画は過去の反省がまったく生かされていないと、次のように批判する。

―河田さんがまとめた報告書に従って、東北で巨大な防潮堤計画が進んでいます。

河田 災害の後の復旧復興で一番大切なのは被災者の生活再建。そのなかで防潮堤をどうするかを考えないといけないのに、それができていない。そもそも防潮堤だけで町を津波から守るのは無理。工夫して災害に強い町づくりにしないと。例えば、防潮堤の後ろにある国道を盛り土でかさ上げするなどして多段階で津波の外力を抑えるなどだ。

―ですが、住民の反対をよそに計画だけが進んでいます。

河田 これは岩手、宮城、福島の3知事のリーダーシップに問題がある。知事が、復興には生活再建がまず必要だから防潮堤の高さはゆっくり考えよう、町づくりは時間をかけてやろうと方向性を示せばみんな動く。生活再建に基づいた町づくりができなければ、若者は外へ出ていってしまう。これでは奥尻島の反省が生かされていない。

―どうすればいいのか。

河田 あれだけの被害が出た地域を短期間で生活できるようにするのは無理。同じような津波がすぐ来るわけではないのだから、震災前の高さの堤防を粘り強い構造でとりあえず造る。そして時間をかけて、生活再建につながるような土地利用を考えるべきだ。

―防潮堤だけに頼らない方法はあるのか。

河田 例えば、海岸近くの宅地と、そこから陸側に離れた場所にある農地を交換する。また、海岸を1、2km海側に広げるのも効果がある。気仙沼(けせんぬま)市なら、防波堤を造らず海岸を半分埋め立てて10m以上の高台にし、不足している水産加工場用の敷地にする。そうすれば防潮堤はいらない。

―しかし、行政からそうしたアイデアは出てきません。

河田 公募したらいい。ニューヨークの同時多発テロの跡地利用も国際コンペしている。アイデアが実現したら観光資源にもなる。とにかく防潮堤の整備は急がず、時間をかけて住民の意見を聞きながら進めるべきだ。

* * *

こうした河田氏の指摘もあってか、ここにきて気仙沼の大谷(おおや)海岸など防潮堤計画の見直しを始めたところもある。町づくりや生活への影響、それにメンテナンスのことを考えたら、巨大な防潮堤はデメリットが多いのも事実。計画を策定する3県は、もう一度、住民の声にしっかりと耳を傾けるべきではないか。

(取材・文・撮影/桐島 瞬)

最終更新:10/10(月) 6:05

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