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「中国人は本を読まない」のか? 中国の出版事情とは

HARBOR BUSINESS Online 10/10(月) 9:10配信

 日本では活字離れが……と言われ始めて久しいが、中国では活字離れの前に読書習慣があまり定着していない。2015年全国国民閲読調査によると、年間1人あたりの読書数は4.58冊となっている。この数字には、新聞は含まれず、雑誌や漫画は含んでいると思われる。(参照:「人民網」)

 確かに、現代中国では、電車やバス、飛行機などの車内、機内で読書する人はほんとど見かけない。1人ならスマートフォンでチャットやゲームをしたり、複数ならひたすら話している光景が一般的だ。そもそも書店も数えるほどしかなく、中国本土のコンビニエンスストアなどの店でも書籍や雑誌はあまり売られていない(香港のコンビニにはある)。amazonのようなオンライン書店で書籍を購入しているという話も耳にしない。

◆読書習慣復活の前にスマホが台頭

 中国瀋陽生まれで現在は日本へ帰化している40代の女性経営者は、「現代中国語は漢字を簡略化したことは日本でも知られていますが、実は、共通語として広く普及させるために文法や発音も簡単にしています。中国語は、少ない語数で意味を理解できる漢字の性質もあり速読にも適しており、読書向きの言語だと言えます。しかし、毛沢東時代に行われた大躍進や文化大革命などの大きな混乱の影響で本を読むという習慣、価値が失われてしまったんです。その後、改革開放となり出版統制も緩み本を読む習慣が再定着すると思われたのですが、その前にそれまで一般大衆には縁がなかったテレビやインターネット、スマートフォンなどが次々に登場して子どもだけでなく大人もそれらに流れていき今に至ります」

 中国が日本と同規模の出版市場であればベストセラーは単純計算で2000万部を超えるわけだが元々の読書土壌が育っていないので、中国の出版市場が紙媒体から電子媒体へ移行していくのかも現時点では不透明だ。

 では、中国の出版市場は小さいのかというとさすが約14億人の世界一の人口を抱える国である。日本の約3倍ほどの市場があると推計され、しかもわずかであるが増加傾向を見せている。

◆稲盛和夫氏の著書は中国で180万部!

 今年8月に開催された中国最大の図書博覧会「第23回北京国際図書博覧会(BBIF)」で発表された統計によると、総発行部数86億6000万部(2015年)で、この数字には新刊書26万点と再発行書21万5000点を合わせた総発行部数となり、新刊に限ればざっくりではあるが約46.6億部となり、1人あたり3.3部となる。日本の新刊総発行部数は、7万6465点、10億8398万部(2014年)、1人あたり8.5部となる。(参照:「中国・本の情報館 東方書店」)

 たとえば、ファッション雑誌『ViVi』の中国大陸版は100万部(2011年)発行しており、日本の35万部(2012年)の約3倍となっている。

 では、中国のベストセラー書籍はどのくらい売れているのかと東京の中国語書籍専門店へ確認すると中国は年間ベストセラーの部数などの統計発表はされていないそうだ。参考になるのは、各書籍関係元が各自で発表している数字くらいだ。日本の書籍だと『生き方』(稲盛和夫)が180万部、『隣のトットちゃん』(黒柳徹子)100万部などとなる。中には、『習近平氏、国家統治を語る』が1700万部突破と2015年2月に『人民日報』が報じたがこれはレアケースと考えてよいだろう(いずれも数字は累計部数)。(参照:「レコードチャイナ」)

◆2016年上半期は東野圭吾作品が大人気

 また、前出の東方書店によるBBIFで発表された、2016年上半期の全国ベストセラーランキングによれば、部数は不明だが

1、『追風筝的人』(日本語題:カイト・ランナー)(米)カーレド・ホッセイニ著、李継宏・訳 上海人民出版社(2006年5月 第1版)

2、『解憂雑貨店』(原題:ナミヤ雑貨店の奇蹟)(日)東野圭吾・著、李盈春・訳、南海出版公司(2014年5月 第1版)

3、『三体』劉慈欣・著、重慶出版社(第1部:2008年1月 第1版)※ 2015年第73回ヒューゴー賞を受賞した中国SF小説

4、『龍族』江南・著、長江出版社(第1部:2010年4月 第1版)※ 中国でロングセラーの長編冒険ファンタジー

5、『白夜行』(日)東野圭吾・著、劉姿君・訳、南海出版公司(2008年12月 第1版)

 という結果になっている、なんと東野圭吾作品が2作品もランクイン、1位もアメリカ作品というから驚きだ。

 文革などの影響で読書習慣が失われていたとはいえ、スマホの普及などを中心にデジタル書籍市場も伸びつつある中国。もちろん、一人っ子政策の影響で、いまの「書籍購入の中心」だと推測される若年層自体の人口が減ってきているので、果たしてこの先どうなるのかはわからないが、日本のコミックや文芸が上位にランクインする中国の書籍市場、この先も気になる存在であることは間違いない。

<文/我妻伊都(Twitter ID :@ito_wagatsuma>

ハーバー・ビジネス・オンライン

最終更新:10/10(月) 13:23

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