ここから本文です

転職の際「部下」を連れていくことの大問題

東洋経済オンライン 10/10(月) 9:00配信

 転職する際、かわいがっていた前職の部下を引き抜いていきたがる人がいます。大きな成果を出すためには1人ではなくチームで取り組むほうがよく、人柄も力量もよく知っている仲間を連れていくことが必要ということかもしれません。ただ、転職先の会社からみて、その部下たちは本当に必要なのでしょうか? 

■ある化粧品会社の失敗例

 取材していて、多くの失敗例をみてきました。たとえば、ある創業40年を誇る化粧品会社での出来事。創業オーナーが70歳を前にして引退を決意。事業継承をとなったとき、オーナーは内部昇格で後継者を選ぶのではなく、外部から招聘することにしました。そのオーナーはヘッドハント会社を通じて、数多くの後継者候補と会い、大手流通会社の社長Dさんと意気投合。この人であれば後継者を任せられる……と確信して「当社の新社長になっていただきたい」とオファーを出しました。するとDさんは「喜んでお受けします」と回答をしたものの、

 《今の会社で一緒に働いている経営企画室の主任であるSさんと、マーケティング部長のCさん、それに営業本部のJさんを連れて行きたい。それが無理なら社長就任は難しい》

 と条件を突きつけました。社長だけでなく新たに数名の経営幹部および幹部候補も外部から招聘することになるのです。

オーナーは条件を呑んだ

 ぜひ後継者にと思っている次期社長が指名する人物ですから「オーナーが面接して合否を決める」とはなかなか言えません。もしかしたら、社内の幹部と相性が悪いかもしれない。あるいは仕事でもめることがあるかもしれないと不安はありましたが、オーナーは条件を呑みました。それくらい、Dさんを高く評価していたのです。

 Dさんは流通業界ならだれもが知っている存在。しかも、オーナーが経営してきた化粧品会社とDさんが社長をしている流通会社では、圧倒的にDさんの会社のほうが規模が大きかったのです。格下の会社で社長になってくれるのだから、多少の要求には応えるべきかもしれないという、引け目のある状態も無理な条件を拒否できなかった理由かもしれません。

 こうして、新社長は就任に際して、これまでかわいがってきた子飼いの部下を引き連れて、オーナーから会社を引き継ぐこととなりました。

 子飼いとは長く関わりがあり、自分が育てた、それゆえ自分のいうことなら何でも聞くような人物。話題の大河ドラマ「真田丸」であれば、豊臣秀吉に小さいころから仕えて大名にまで上り詰めた加藤清正、福島正則あたりのことでしょうか。

 Dさんは若手時代から自分が鍛えてきた部下たちに目をつけており、こうした機会に一緒に連れていこうと考えていたのかもしれません。「俺が新たに社長になる会社についてきてくれ」と声をかけると「喜んでついていきます」と戦国時代の武将と重臣の関係のように会社を辞めて、社長についてきました。部下に声をかけて、引き抜く作業はDさんがすべて行いました。オーナーからすれば、これだけ従順な子飼いがいること、さらにヘッドハント会社を使わず、無駄な経費がかからなかったので

 「さすがDさん。社長を任せてもまったく心配は不要に違いない」

 とも思ったようです。

■「子飼いの部下」の登場で組織が混乱

 しかし、その確信はもろくも崩れることになります。新社長のつくった新組織では、子飼いの部下たちが要職に任用されました。当然ながら前オーナー時代に要職を任されていた人物で外された人、あるいは間もなく要職に就けると期待していたのに、その機会が失われた人が出てきました。これまでオーナーに高く評価されるためだけ考えてきたことが無駄になってしまう。

1/3ページ

最終更新:10/10(月) 9:00

東洋経済オンライン

東洋経済オンラインの前後の記事

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

北朝鮮からの脱出
北朝鮮での幼少時代、『ここは地球上最高の国』と信じていたイ・ヒョンソだったが、90年代の大飢饉に接してその考えに疑問を抱き始める。14歳で脱北、その後中国で素性を隠しながらの生活が始まる。 これは、必死で毎日を生き延びてきた彼女の悲惨な日々とその先に見えた希望の物語。そして、北朝鮮から遠く離れても、なお常に危険に脅かされ続ける同朋達への力強いメッセージが込められている。