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どんな時代でも生き抜ける「自立した強い子供」の育て方――柳沢幸雄(開成中学校・高等学校校長)

デイリー新潮 10/10(月) 6:00配信

 高度成長もバブルも遠い昔となった今、若者は未来に希望が持てない――。そう聞けば 自ずと心配になるのはわが子、わが孫の将来である。これから先、子供たちにどんな力をつけさせればいいのか。東大合格者数ナンバーワンの有名男子校の校長が処方箋を示す。

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 この不透明な未来を子供たちは生き抜いていけるのか。子や孫を持つ人の多くが不安を覚えている。少子高齢化で、近く現役世代2人で高齢者1人を支えることになるうえ、技術立国の象徴たる東芝やシャープの経営が傾き、人工知能の発達で既存の職業の半分は消える、というレポートが発表される。そんな時代に、子供たちはどんな力をつければいいのか。

 東大とハーバード大でそれぞれ10年以上教鞭をとり、現在、母校の開成中学・高校の校長を務める柳沢幸雄氏(69)が、道筋を示してくれる。だが、柳沢氏によれば、前提条件が異なるという。

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 実は、いつの時代も未来は不透明なのです。未来が安定して見えたのは、終身雇用があり、大学を卒業して公務員や一部上場企業の社員になれば一生安泰だと思われた時代。しかし、実際にそんな人生を送った人が何人いるでしょう。私は昭和22年生まれですが、東大工学部化学工学科の同級生40名中、ひとつの会社で終えた人は数人だけです。

 では、なぜ日本に終身雇用制度ができたのか。東京五輪のころ、工業化の進展でいわゆる“金の卵”が必要となり、その際、若年労働力を農村から都市に移動させるため、企業は「一生面倒を見ます」と言って親を納得させた。こうして良い大学、良い会社に入れば安泰、という意識が日本人の間に定着したのです。

 しかし、1992年末に音響メーカーのパイオニアが、50歳以上の管理職に指名解雇を通告。もう終身雇用の時代ではない、と気づかされました。つまり、終身雇用・年功序列とは経済規模が右肩上がりの、誰もが昇進できるという状況下で唯一成り立ったもの。それがなくなったから未来は不透明だ、ということではないかと思います。

 むしろ、これからの時代の変化は、今までに比べて小さいと考えています。昔、免許証の書き換えなどに行くと、5000字、6000字もの中から名前の漢字を拾い、和文タイプで打ってくれました。それだけの漢字の位置を記憶している和文タイピストは、給料がよい仕事でしたが、誰もがパソコンを使う今、彼女たちは何をしているのでしょうか。その意味で、技術の変化は昔のほうが大きかった。コンピューターが身近になり、インターネットが出現し、という以上の技術革新は、この先、あまりないと思っています。

 親が置かれている状況についても、同じことが言えます。私の父は明治生まれで、最終学歴は高等小学校でしたから、私が高校に進んだ時点で、学校で何をやっているかわからない。つまり私の親の世代は、子供がどういう教育を受けるのかわからなかった。一方、今の親たちは、自分の子供が受ける教育はすべて経験ずみなのです。

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 だが、今の日本の子供たちは、別の意味で大きな問題を抱えているという。それは、時代の先行きを心配する前に解決すべき、やっかいな問題であるようだ。

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 親は子供をどう導けばいいのか。親の究極的な望みは「自分が死んだ後も、ちゃんと自立して生きていってほしい」ということではないでしょうか。そのためにも、子供にリーダーシップを発揮できるようになってほしいと願っている。

 では、子供が成人した後、経済的に自立して生きていけるようになるには、何が必要なのか。それを考えるために、内閣府が発表した平成26年度の「子供・若者白書」における国際比較を見てみましょう。

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最終更新:10/10(月) 6:00

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