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【著者に訊け】雫井脩介氏 心理サスペンス『望み』

NEWS ポストセブン 10/11(火) 7:00配信

【著者に訊け】雫井脩介氏/『望み』/KADOKAWA/1600円+税

 まさに究極の選択である。ある日、遊びに出たまま帰らない息子の友人が遺体で発見され、現場付近では慌てて逃げる2人の少年の姿が目撃された。埼玉県、〈戸沢市〉郊外で起きた少年リンチ殺人事件である。

 未だ消息不明の関係者は3名。そのうち高校1年生の息子〈規士〉は被害者なのか、それとも加害者なのか──。市内で建築事務所を営む父親〈石川一登〉と校正者の母親〈貴代美〉は、まさに2つに1つの可能性に身を引き裂かれてゆく。

 父は息子の無実を、母は生存を信じる。しかしそれは、前者であれば規士の死を、後者は息子が殺人犯であることを同時に意味した。その致命的な『望み』の違いに崩壊寸前となる家族の、どちらに転んでも〈望みなき望み〉の行方を見事描き切った、雫井脩介氏、渾身の一大傑作である。

 先ごろドラマ化もされた『火の粉』や、『犯人に告ぐ』『クローズド・ノート』等、圧倒的なリーダビリティや心理描写で定評のある雫井氏。その彼が「最も自分を追い込み、最も悩み抜いた作品」が、本書だという。

「この小説は、父親と母親それぞれの視点で進みます。息子を大事に思っているのは同じでも、事件の捉え方、考え方は違う。ただ、対照的に見えても、そこにはそれぞれ葛藤が生じ、変化も起こります。そんな複雑な心理を、どう表現すればいいかということに悩み、執筆の体感時間がいつもより何倍にも感じられました。

 両親や妹〈雅〉にすれば規士が犯人でも被害者でも救われず、各自守りたいものが違うだけで、誰の望みも正しいわけです。しかもマスコミが押し寄せる中、受身を強いられた一家の揺れ動く心理を、僕自身息をつめて拾っていきました」

 一登自ら設計した自慢の家に一家4人が暮らす石川家。規士は練習中の事故でサッカー部をやめて以来、塞ぎがちだが、有名私立をめざす中3の雅と仲もよく、一登たちは子供たちと何でも話し合ってきたはずだ。

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最終更新:10/11(火) 7:00

NEWS ポストセブン

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