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第2回討論会、共和党候補者達に打撃 アメリカのリーダーどう決まる?その29

Japan In-depth 10/11(火) 23:00配信

10月9日に行われた2度目の大統領候補ディベートは「タウンホール」と呼ばれる。これは候補者同士の討論というより、司会者が聴衆からの質問も織り交ぜながら、対話式に進める形式だ。

候補者は、質問者が個人的に気になっている点について、わかりやすいように国家対策を具体的な例を持って答える。時には席を離れて質問者に近づいたり、カメラや参加者全員に向いて訴えかけたりする。自分が答える番でない時は席に座って口を挟まないのが暗黙の了解となっている。

ところが、そこにマナーもルールもわきまえない候補者が1人現れ、席につかず、威嚇するように肩を揺らして終始うろつき回り、質問者の名前にも質問の内容にも気にもとめず仏頂面で通し、司会者の制止も聞かず、ひたすら事実とは異なる主張ばかりを繰り返し、対立候補者を罵倒する人物がいたらどうなるのか?それでもとりあえず前回よりはマシだから合格、となるのがドナルド・トランプの期待値が低いためだ。

何しろ彼はそれまでの2日間、タウンホール式のディベートに備える余裕などなかったのだから。金曜日夜にワシントン・ポスト紙がスクープしたのは、トランプ主演の人気TV番組「ザ・アプレンティス」が好調だった約10年前、芸能ニュースを伝える「アクセス・ハリウッド」という番組の密着取材の際、マイクが入っているのに気づかず、下品に女性を見下す会話を録音したテープだった。

トランプは、その後発表した謝罪ビデオで、「これは昔のことで、ロッカールームで男同士がよくやるおふざけ」と言い訳をしたが、その内容は自分自身が女性に性的暴力を振るってきたことがあると認めているような内容だ。

ディベートでも同じ説明を繰り返しただけで、海外ではイスラーム国のテロリストが斬首しているのに、こんなことを取りざたしている場合ではない、と話題を逸らして失笑を買った。

それ以外にこのディベートで浮上したトランプの問題点はいくつかある。

・シリアの激戦区アレッポにどう対処すべきか、と問われて、ロシアを敵に回してでもアサド政権を倒すべきと主張したばかりの副大統領候補マイク・ペンスとまったく異なる見解を示し「アレッポはもう陥落したに近い」と言い、状況を把握していないことをうかがわせた上に、ペンスとは意見のすり合わせさえろくにやっていないことを認めた。

・先日ニューヨーク・タイムズ紙が報道した通り、1995年に多額の損失を計上し、それを利用して何年も連邦税を払っていないことを認めた。

・既に連邦捜査局の調査が終わっているヒラリー・クリントンのEメール削除に関し、自分が大統領になったら特別検察官を任命し、クリントンを投獄すると言った。また、なぜ30年間も政治家をやっていてもっと政策を立ててこなかったのかと問い詰めたことに対しクリントン候補が、自分は共和党大統領の時の民主党上院議員であり(ねじれがあった)、大統領は「拒否権」があるから全て思う通りにはできなかった、と答えても通じず、民主政治制度そのものを理解していないことをうかがわせた。

タウンホール式のディベートは正確には直接的な討論ではないので、勝ち負けは印象論になりがちだが、視聴者もメディアも、クリントンがやや優勢としながらも大統領選挙そのものが「地に落ちた」という判断が多かった。

だが実は、投票日まで1ヶ月を切った今回の選挙に臨む、トランプ以外の共和党の立候補者(「ダウン・バロット」と呼ばれる州知事選や国会議員)にとって、さらに難しい問題が残されることになった。先週の暴言ビデオ流出で「これ以上、トランプを支持することはできない」と共和党保守派や主流派がさらにトランプと距離を置くことを発表した。この中には下院議長のポール・ライアンも含まれている。共和党の中からは大統領候補をペンスに譲るべきという声も挙がった。だがトランプ陣営は辞退することは金輪際ありえない、と態度を強固にし、離脱者を「裏切り者」呼ばわりしている。

強固なトランプ信者である有権者は、これ以上何が起こってもトランプ支持を覆すことはないだろう。トランプかクリントンかまだ決めかねている浮動票がこれ以上トランプになびくのも難しそうだ。となると、統計上では「負け」が決まりつつある候補と共闘するのをやめても、今さら自分とトランプの違いを有権者に訴えるには時間がなさすぎ、その間にもトランプ支持者からは裏切り者呼ばわりされて、共和党の票も離れていくというダブルパンチだ。

このため、拮抗していた上院選挙も民主党がやや優勢、下手をすると下院も民主党が過半数議席を獲得する可能性も出てきた。

大原ケイ(米国在住リテラリー・エージェント)

最終更新:10/11(火) 23:00

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