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過去のデータで将来を予測するのはバックミラーを見て運転するが如し

Wedge 10/11(火) 12:30配信

 データは重要です。データに基づかない議論は説得力がありませんし、独善に陥る可能性が高くなります。しかし、データを妄信することも危険です。バックミラーを見て運転するようなものだからです。データ至上主義者に「勘ピューターも加味しないと」と言っても、なかなか受け入れてもらえませんが。今回は、データ至上主義の危険性について考えてみましょう。

バブル期に銀行が不動産融資を増やした一因はデータ過信

 バブル期に不動産投資が過熱した一因に「土地神話」があったと言われています。「戦後、土地の値段は一度も下がったことがないから、今回も大丈夫だ」と人々が信じていた、というのです。バブル期の人々は、客観的な過去のデータから将来を予測していた、ということなのでしょう。

 銀行内部でも、過去データが分析され、「過去の不動産担保融資の焦げ付き率は低い。特に、過去1年の焦げ付き率はゼロに近い。だから不動産担保融資は安全なのだ」といった議論が行われていたのでしょう。バブル期は地価が上がり続けていたので、融資が焦げ付くはずがありません。借金が返せない場合には不動産を売却して返済することが容易だったからです。そんな時期のデータを用いて「今後も不動産担保融資は焦げ付かない」と予想していたのだとすれば、問題でしょう。

 リーマン・ショック前、米国で住宅バブルが発生していました。米国では住宅ローンを証券化して売却する手法が多用されていますが、その際に重要なのは格付けです。問題なのは、格付けが過去の焦げ付き率を参考に決められている事です。バブル期の邦銀と同様、米国で証券化商品を購入した人々は、格付けという過去データの分析結果を妄信した、ということだったわけです。

経済構造が変化していると、過去データはミスリーディング

 江戸時代のデータを用いて日本経済の将来を予想しようと考える人はいないでしょう。当時と今では、経済構造が全く異なっているからです。しかし、人々が経済構造が変化していることに気付いていない場合には、ミスリーディングなことが起こり得ます。かなり前のことですが、筆者が経済予測で珍しく(笑)大ヒットを飛ばした話をしましょう。

 高度成長期の日本製品は、「安かろう悪かろう」と言われていました。「日本製品は、品質は悪いが値段が安いから買おう」と先進国の人々に思われていたわけです。しかし、その後の安定成長期に、日本製品は品質を大いに向上させ、プラザ合意(1985年)の頃には、世界中で「日本製品は品質が良いから買おう」と思われるようになっていたわけです。たまたま筆者はプラザ合意当時、米国留学中だったので、米国製自動車より日本製自動車の方が信頼性が高いことを熟知していたのです。

 留学から帰国して調査部に配属になった筆者は、貿易収支を担当することになりました。当時は、「円高になると、外国人から見て日本製品が割高になる。値段の安さで輸出を伸ばして来た日本製品にとって、大きな打撃だから輸出は激減するだろう」という予測が通説でした。当然、過去のデータからも「円高になると輸出数量が減少する」といった分析が多数導かれていたわけです。

 そこに筆者が「日本製品は品質で売れているので、円高になって日本製品が割高になっても世界中で売れるはずだ」という「勘ピューター予測」を出したわけです。結果は大当たりでした。

 後日、円高後のデータが出そろった後で、「高度成長期とプラザ合意後について、円高と輸出数量の関係を分析すると、明らかな違いがある。これは経済構造が変化した事の証拠である」というレポートを書いたのです。何十年も調査関連業務に従事していますが、最大のヒット作が駆け出しだった時の当該レポートだったというのは、ビギナーズ・ラックとしか言いようがありませんが(笑)。

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最終更新:10/11(火) 12:30

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