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商店街を活性化するには不毛なコンサルタントへの指導が必要 --- 尾藤 克之

アゴラ 10/11(火) 16:30配信

全国で商店街の活気が失われてシャッター街は珍しくない。しかし、様々な活性化事業が行われてきたにも関わらず、繁栄している商店街が1~2%に留まっている理由はなぜか?

今回は、市場調査会社を経営し千葉商科大学非常勤講師として活動をする、辻井啓作氏(以下、辻井)に商店街が抱える課題と活性化させるためのプランについて伺った。

■疲弊する地方経済の象徴である商店街

疲弊する地方経済の象徴としてニュースとして映し出されるのが廃れた商店街である。シャッター街と揶揄されるように、いくつかの商店は廃業しシャッターが降ろされ残った店にも活気があるようには見えない。

中小企業庁が公表している最新資料「平成27年度商店街実態調査報告書」によれば、「繁栄している」が2.2%となっている。平成21年調査、平成24年調査同様に「衰退している」と回答した商店街が最も多い。

「この調査は商店街に対してアンケート調査をおこない有効回答を得ています。しかし商店街の場合、有力な商店街の多くは補助金を受けていることから、回答が有力な商店街に偏ることが予想されます。そのため実際に繁栄している商店街はもっと少ない可能性があります。」(辻井)

つまり繁栄している商店街は各都道府県に数えるほどしかないということになる。さらに、大都市圏(東京、大阪、名古屋)に偏る傾向があると思われることから、他県に繁栄している商店街は「ほぼない」という状況なのかも知れない。

「1970年の同じ調査では、近年のものと少し選択肢が違っているものの、『繁栄している』とする商店街の割合は39.5%に上っています。このことからも、いかに現在の商店街が低迷しているかを理解することができるでしょう。」(辻井)

「また、商店が集まり、組合や近い組織があれば商店街として取り扱われます。東京であれば、銀座、新宿、渋谷、原宿なども商店街です。こうした地域が繁栄しているのは、改めて説明する必要もありません。」(同)

■活性化している商店街の共通点

辻井によれば、前述の中小企業庁の調査には含まれていない、全国の都市部にある自然発生的に店舗が増えて活性化している商店街があるとのことである。例えば、旧来からの繁華街の隣接地域や裏通りにあたる地域に、カフェ、美容院、雑貨店、飲食店などが増えている地域のことである。

「一度寂れて家賃が下がりきった中心市街地の商店街に若者向けの店の出店が相次ぎ、意外に人が集まる地域になっている場合があります。東京なら裏原宿や中目黒の目黒川周辺は、ここ10年くらいでお店が増えて若者が集まるようになりました。」(辻井)

「また違った路線であれば、近年の秋葉原や中野などのサブカルチャーによる再生、韓流ブームにのって賑わった大久保なども以前にはなかった活性化した商店街です。」(同)

大阪は、心斎橋の賑わいがアメリカ村に移り南堀江が活気づいている。京都では三条通周辺が寂れた後に再活性化の様相を呈している。このように全国各地に活性化している事例が見られるそうである。つまり商店街の活性化は不可能なことではないということだろう。

■商店街組合には刷新が必要である

辻井は商店街が活性化しない理由について、国や自治体にとって商店街が活性化するか否かが些細なことにすぎないという問題点を提起している。

これは国の予算に対して商店街振興予算の額を比較すれば分かりやすい。わずかな予算のこの分野を改善するのにどれほどの負担ができるのか。国や自治体の現場の職員が問題意識を持ったとしても行政全体で考えれば無関心に近い分野なのである。

さらに、「商店街について何かを考えて意見を発する人はほぼ商店街組合側の人間である」ことも問題視している。例えば、商店街活性化を支援するコンサルタントに仕事を発注するのはほぼすべてが商店街の組合そのものである。

「私は、以前、商店街のコンサルティングをおこなっていましたが、商店街組合の存在が活性化の阻害要因になっていることに気がついたため、その後はこれらの組織からコンサルティング業務を受けないようにしています。」(辻井)

コンサルタントは依頼人の耳障りの良いことをならべるだろう。さすがに依頼人の存在意義に関わるような根幹部分を指摘することはできない。結果的に商店街予算の中で仕事をしているだけだから何も改善しない。一層の刷新が求められている。

<追伸>

本稿を書くにあたり、私と辻井との関係について述べておきたい。約20年前、私はシンクタンクに勤務していた。会社の帰途で中央線に乗車している時、ある乗客が目の前で突然倒れ、顔色が土気色になっていく場面に遭遇した。

私は、乗客を横にして呼吸しやすいようにボタンやベルトをゆるめ、すぐに救急隊員を呼び最低限の対応をおこなった。同時刻はいささか車内が混んでいたことから電車が遅れてしまい、心無い言葉を浴びせる人もいたが、一緒に手伝ってくれたのが辻井だった。

今回、アゴラで投稿していることが起因となり、20年ぶりに辻井とコンタクトがとれた。改めてご縁に感謝するとともに、あれから大分時間が経過してしまったが、当時を思い出しながら一献交わしたいと思っている。

参考書籍
『なぜ繁栄している商店街は1%しかないのか』(CCCメディアハウス)(http://amzn.to/2dFkQSC)

尾藤克之
コラムニスト

尾藤 克之

最終更新:10/11(火) 16:30

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