ここから本文です

厚労省、立派な大義名分の裏でせっせと利権作り

JBpress 10/11(火) 6:10配信

 福島県南相馬市の産科医療が崩壊の瀬戸際にある。きっかけは新専門医制度の施行だ。

 新専門医制度とは、初期研修を終えた若手医師を対象とした教育制度のこと。従来、若手医師が自分で病院を選び、修業を積むことができたが、新制度では、内科や産婦人科などの各学会が定めるカリキュラムに従い、所定の病院で研修することが義務づけられる。

 この制度に従わなければ、「専門医」の資格を得ることができない。将来の就職で圧倒的に不利になる。

 各学会のカリキュラムは、日本専門医機構という上部団体がチェックする。この制度を厚生労働省も支援してきた。いや、主導してきた。

■ 半分以上の都道府県で基幹病院が1つだけ

 この制度では、若手医師は基幹病院に就職し、そこから地域の病院に派遣、あるいは斡旋されることになる。

 産婦人科の場合、24の都道府県で基幹病院は大学病院1つだけという現実がある(図1)。福島県の場合、福島県立医大だけだ。このような地域では、地元の大学に「入局」しないと専門医になれないことになる。

 南相馬市立総合病院の初期研修医に山本佳奈さんという女性がいる。大学生時代から指導している。

 彼女は大阪府の四天王寺高校から滋賀医科大学に進み、卒業後、被災地の医療に従事したいと希望し、南相馬市立総合病院に就職した。初期研修を終えたら、そのまま南相馬に残り、産科医になりたいと考えている。

 彼女は、このことを南相馬市立総合病院の上司や福島医大の教授に相談した。南相馬市立総合病院の院長、副院長からは「ありがたい。全面的に応援する」との回答を得た。

 一方、福島医大の教授からの回答は驚くべき内容だった。そのままご紹介しよう。

 「南相馬の産婦人科は単独で専攻医はとれない施設です(現在および将来も)。福島県立医大の研修プログラムで派遣されるのであれば可能という解釈でいいと思います。しかし実際は病院に専攻医を派遣することはありません。もしあっても1~3か月以内の短期でしょうね」

 南相馬市立総合病院の指導体制が充実していないから、たとえ入局しても南相馬には行かせないと明言している。

 南相馬市立総合病院の産科医は、福島医大の医局からの派遣だ。指導体制の充実は、福島医大の医局の匙加減ひとつだ。ところが、彼らには、そのつもりはなさそうだ。

■ 南相馬市を最優先すべきなのに・・・

 私は、この教授に呆れ果てた。現在、福島県内の産科体制で南相馬市以上に優先する地域があるのだろうか。

 人口が回復し、出産数も年間200件を超える。高齢化が進み、婦人科診療のニーズも高い。これを1人の産婦人科の医師が担当し、疲弊し切っている。

 この教授は、産婦人科医や小児科医のキャリアアップを支援するための研究をしているらしい。ホームページには、各地でセミナーや相談会をしていることが紹介されている。

 だが、実際にやっていることは、専門医資格を盾に、他府県から福島のためにやって来た女医を脅しているだけだ。そこに若手を育成しようとする理念は見当たらない。

 この教授に限らず、福島医大は震災バブルだ。「地域医療支援」という名前の様々な寄附講座が立ち上がり、医師派遣の見返りに自治体からお金をもらっている。

 また、「腫瘍生体エレクトロニクス」「多能性幹細胞研究」「スポーツ医学」など、およそ震災復興とは無関係の講座も存在する。

 東日本大震災以降、政府は、福島県の復興を願い、多額の税金を投入してきた。国民も、政府を応援してきた。福島医大幹部は、恥ずかしくないのだろうか。

 日本専門医機構や日本産科婦人科学会の幹部は、何を見ているのだろうか。

1/2ページ

最終更新:10/11(火) 7:45

JBpress

記事提供社からのご案内(外部サイト)

JBpress PremiumはJBp
ressが提供する有料会員サービスです。
新たな機能や特典を次々ご提供する“進化
するコンテンツ・サービス”を目指します。

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

北朝鮮からの脱出
北朝鮮での幼少時代、『ここは地球上最高の国』と信じていたイ・ヒョンソだったが、90年代の大飢饉に接してその考えに疑問を抱き始める。14歳で脱北、その後中国で素性を隠しながらの生活が始まる。 これは、必死で毎日を生き延びてきた彼女の悲惨な日々とその先に見えた希望の物語。そして、北朝鮮から遠く離れても、なお常に危険に脅かされ続ける同朋達への力強いメッセージが込められている。