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私たちはなぜ死ぬのか?生命の秘密に真っ向から挑む

JBpress 10/11(火) 6:00配信

 (文:冬木 糸一)

 本書『生命、エネルギー、進化』は『生命の跳躍』『ミトコンドリアが進化を決めた』のニック・レーンによる「生命の起源と来歴を語る」一冊だが、これが圧巻の内容である。

 前作までの内容を取り込みアップデートをかけた上で、生命の起源をめぐる問題に真っ向から挑み、多様な分野にまたがる議論を総括しながら、宇宙における生命の普遍的特性とまでいえる、説得力のある結論を導き出してみせる。

 “どんな法則が、宇宙、星々、太陽、地球、そして生命そのものを生み出したのか?  同じ法則が、宇宙のどこかほかの場所でも生命を生み出すのだろうか?  異星の生命もわれわれとそう違わないのだろうか?  そんな形而上学的疑問が、われわれを人間たらしめているものの核心にある。細胞の発見から350年ほど経った現在でも、われわれは、地球上の生命がなぜ今こうなっているのかを知らないのである。”

 細胞はなぜ今のような細胞なのか?  どんな物理的要因が複雑な細胞を誕生させたのか?  なぜ形態が複雑な生物は一度しか生じなかったのか?  なぜほぼすべての真核生物に2つの性があるのだろう?  なぜわれわれは老化したり、がんになったり、死んでしまうのか? 

 こうした疑問点について、本書は主に『エネルギーは進化の要であり、エネルギーを方程式に持ち込んで初めて生命の特質が理解できる。』という観点から、生命の起源に対しての考察を深めていく。

 たとえば、ほぼすべての生命は、プロトン(正電荷を帯びた水素原子)の流れによってエネルギーを得る。

 そのプロセスの一例をあげると、われわれが呼吸で食物を燃焼させて得たエネルギーは、膜を通してプロトンを汲み出し、膜の片側に貯蔵庫を形成するのに用いられ、この貯蔵庫から戻るプロトンの流れが水力発電のダムのタービンと同じく生命を駆動するエネルギー源となる。こうした「プロトン勾配」のシステムが原初の細胞出現の鍵となり、その利用方法の違いが細菌と古細菌に構造的な違いと制約をもたらし、その制約がのちの細胞の進化を決定づけた。

 『なぜ細胞が今のような仕組みになっているのかがわからなければ、病気の理解など望めるはずがないではないか。』というように、本書は上記のような細胞の動作原理から生命の来歴を辿り直すことで、複雑な細胞、複雑な生命へと進化していったわれわれのような生物の制約(たとえばがん/老化/死など)についても精確に考えることができるよう、ステップアップしていくのだ。

■ 岩石と水とCO2があれば生命に必要な諸条件は整う

 細胞や複雑な生物すべての元となっている「生命誕生」の諸条件を簡単に要約してみよう。

 細胞を一からつくるには、まずは前提となる有機物生成のために反応性の高い炭素と化学エネルギーが原始的な触媒のもとを継続的に流れる必要があるが、著者は現状必要な条件すべてに合致するのはアルカリ熱水噴出孔だけであるとしている。ところが、アルカリ熱水噴出孔には「必要物」、たとえば不可欠な水素ガスは豊富にあるものの、このガスは普通の状態ではCO2と反応しない=有機物を形成しないという大きな問題が残っていた。

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最終更新:10/11(火) 6:00

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