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「積極的武力攻撃」へと変質したPKOへの参加で自衛隊は大丈夫か!?

HARBOR BUSINESS Online 10/11(火) 16:20配信

◆憲法をどう解釈しても、現在のPKO部隊での任務は違憲

 PKO(国連平和維持活動)の一環としてアフリカの南スーダンに派遣中の自衛隊は、安保法制によって11月から「駆けつけ警護」が可能となる。他国のPKO部隊が武装集団などに襲撃された際、自衛隊が駆けつけて応戦するというものだ。

 大統領派と副大統領派が交戦するなど、南スーダンが事実上の内戦状態にある中で、自衛隊員の直面するリスクは決して低くないうえ、憲法上の問題も大きい。

 紛争地での国連活動に詳しい伊勢崎賢治・東京外語大教授は「そもそも、現在のPKO活動にPKO協力法が対応していません。それどころか憲法をどう解釈しても、PKO部隊での任務は違憲となります」と指摘する。

◆先制攻撃も辞さない「積極的武力介入」へ

 PKO(Peacekeeping Operations=平和維持活動)とは、「国連の指揮下で紛争地での停戦や軍の撤退の監視等を行い、紛争当事者による対話を通じた紛争解決の支援を目的とする活動」とされる。しかし「1992年にPKO協力法が制定された当時とは、昨今のPKOの活動実態が大きく変わっている」と伊勢崎氏は言う。

「当初、PKOは派遣国での内政干渉を避け、深刻な人道危機が起きても対応できませんでした。転機となったのは1994年のルワンダ内戦で起きた大虐殺です。フツ族の過激派がツチ族を虐殺し、その犠牲者は100万人に及んだと言われています。このとき、PKO部隊は一般市民が殺されているのに何もできなかった。

 その反省を経ての一大変革が、1999年に国連事務総長の名で発布された告知です。PKO部隊は、民間人保護のためにより積極的に武力介入し、武力を行使するようになりました。

 新たに編成された『介入旅団』は、必要とあらば先制攻撃も行います。実際、コンゴ民主共和国では介入旅団が現地武装勢力に攻撃をしかけ、制圧しました」(伊勢崎氏)

◆現地の正規軍と自衛隊の武力衝突もあり得る!?

 こうした最近のアグレッシブなPKO活動は、PKO協力法では想定されていないものだ。同法では、自衛隊のPKO参加での武器使用基準について、自衛官自身の生命・身体の保護のみに限定している。伊勢崎氏は「PKO協力法どころか、憲法にも抵触する」と言う。

「憲法9条第2項では、国の交戦権を否定しています。どこからどう解釈しても、先制攻撃を含むPKO部隊の任務を合憲だとすることは無理な話です」(同)

 しかも南スーダンの場合、副大統領支持層とされるヌエル族を迫害したり、外国から来た人道支援関係者を襲撃したりしているのは、南スーダン軍の兵士だ。場合によっては、現地の正規軍と自衛隊が武力衝突することになるが、伊勢崎氏も「現在のPKO部隊の交戦規定の上では、それは十分にあり得ることです」と警告する。

◆「資源はほしいが、現地の人道危機などは関係ない」では済まない

 今年7月には大統領派と副大統領派の交戦の中で、中国軍のPKO隊員2人が死亡、5人が負傷するなど、現地情勢は依然として不安定だ。憲法やPKO協力法にも反する南スーダンの任務から、自衛隊を撤退させるべきなのではないか?

 だが、伊勢崎氏は「ただ自衛隊を撤退させるだけというなら反対です」と言う。

「南スーダンの人々は助けを必要としていますし、国際社会にも『ルワンダの再来は絶対に避けなくてはならない』という強い合意があります。また、日本は南スーダンがあるアフリカ中部一帯から、原油やレアメタルなどの地下資源を得ています。

『資源はほしいが、現地の人道危機などは関係ない』では済まされません。日本人が議論すべきなのは『自衛隊を撤退させるか否か』ではなく、『自衛隊の代わりに”今”何をするか』です。これなしに、自衛隊は撤退できません」

◆PKOの任務は、文民による活動も含まれている

 ではどうすればいいのか。伊勢崎氏は「自衛隊派遣以外のやり方で、南スーダンの平和のために貢献する方法があります」と言う。

「そもそもPKOの任務とは、軍人によるPKF(国連平和維持軍)だけではなく、停戦監視団や文民警察など文民による活動も含まれているんです。むしろ、こうした文民の活動の方が上位とされているくらいです。

 こうした活動に日本の文民が参加するということは、代替案としてあり得ます。あるいは、『PKO活動にお金を出して協力する』というだけでも、やらないよりは全然マシです」(同)

 南スーダン情勢や安保法制によって、大きな岐路に立つ自衛隊のPKO派遣。「国際貢献」というと、自衛隊しかできないことのように考えられがちだが、軍事以外の部分でも日本ができる貢献はあるはずだ。

【伊勢崎賢治】

東京外国語大学教授、国民安保法制懇メンバー。過去には国連 PKO上級幹部として、東ティモール、シエラレオネの戦後処理を担当。また、日本政府特別代表としてアフガニスタン軍閥の武装解除にも携わる。著書に『日本人は人を殺しに行くのか 戦場からの集団的自衛権入門』(朝日新書)など

<取材・文・撮影/志葉玲>

ハーバー・ビジネス・オンライン

最終更新:10/11(火) 16:20

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