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JAXAの「ジオスペース探査衛星」(ERG)が公開!ヴァン・アレン帯の謎に迫れ!

HARBOR BUSINESS Online 10/11(火) 16:20配信

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)・宇宙科学研究所(ISAS)は9月29日、今年度中に打ち上げを予定している「ジオスペース探査衛星」(ERG、エルグ)の報道公開を実施した。

 地球のまわりの宇宙空間(ジオスペース)には、「ヴァン・アレン帯」と呼ばれる、ドーナツ状の強い放射線帯が存在する。ヴァン・アレン帯は宇宙空間の高エネルギー粒子が、地球の磁場に捕捉されてできたものと考えられており、ERGはこの中へ飛び込み、探査することを目的としている。

◆ヴァン・アレン帯とは何か

「ヴァン・アレン帯」は、地球をドーナツ状に取り巻いている放射線帯のことである。1958年に打ち上げられた米国初の人工衛星「エクスプローラー1」によって存在が発見され、その観測機器を開発したジェイムズ・ヴァン・アレン教授の名前を取って、ヴァン・アレン帯と命名された。

 ヴァン・アレン帯が形作られている原因は、実に太陽にある。太陽は激しく活動をしており、プラズマが常に飛んでいる。このプラズマの流れのことを「太陽風」といい、1億5000万kmも離れた地球にまで届いている。

 この太陽風は地球がもつ磁場にぶつかり、「磁気圏」という構造を形作っている。もし磁気圏がなければ、太陽風が直接地球にぶつかり、地球に住むあらゆる生命は生き延びることができない。つまり磁気圏は、太陽風から地球を守る盾のような役割を果たしている。

 その磁気圏の中には、太陽風のプラズマなどが閉じ込められたような領域があり、それをヴァン・アレン帯と呼ぶ。ヴァン・アレン帯は放射線帯とも呼ばれ、高いエネルギーの電子が大量に存在している。この高エネルギー電子の量は太陽活動によって激しく変動しており、太陽活動が活発になり、高エネルギー電子(粒子)がたくさん飛んでくる宇宙嵐と呼ばれる現象が起こると、ヴァン・アレン帯の高エネルギー電子が急激に増加することが知られている。すると、地球のまわりを周る人工衛星が障害や故障を起こすこともある。

 このヴァン・アレン帯の高エネルギー電子が、どこで、どのように作られているのかは、ヴァン・アレン帯が発見されて以来の謎となっている。実は、太陽風のもつ電子のエネルギーは100電子ボルトほどしかなく、一方でヴァン・アレン帯の電子のエネルギーはその1000倍以上も大きい。はたして何がこれほどまでに大きなエネルギーを生み出しているのか。その謎を解くために開発されたのがERGである。

 ヴァン・アレン帯がどのようにしてできているのかがわかれば、発見から半世紀を経て、その謎に終止符を打つことができる。またヴァン・アレン帯に存在する放射線は、人工衛星や宇宙ステーションの安全性に大きな影響を及ぼすため、その状態を予想することもできるようになると期待されている。

◆ヴァン・アレン帯に突っ込むERG

 ERGは1.5×1.5×2.7mの直方体の形をしている。質量は約350kgで、人工衛星としては小型の部類に入る。この小型のボディの中に、世界最先端の性能をもつ合計8基の観測機器が搭載されている。

 この観測装置は、電磁場の変化や、飛んでくる荷電粒子(電子・イオン)を、非常に細かいスケールで観測することができる。一方、それだけ細かいデータを取り続けると、データの量は膨大なものになるため、ERGでは高速ネットワーク装置や、衛星の中でデータを処理できる装置が搭載されるなど、「頭の良い衛星」にもなっている。

 そしてERGの最大の特長は、ヴァン・アレン帯を詳しく探るために、その中へ飛び込むようにして飛ぶことである。前述のようにヴァン・アレン帯は強い放射線があるため、コンピューターなどが誤作動を起こす危険があり、精密機器のかたまりのような人工衛星にとっては長居したくない場所である。その中にあえて突っ込んでいかなければならないということは、衛星本体や観測機器などを強い放射線に耐えられるように造らなければならないということであり、そのためERGの開発は当初の計画から1年ほど遅れることになった。

◆さまざまな国や機関と連携

 ERGの開発には、JAXAをはじめ、日本の大学や高等専門学校、さらに台湾の大学も参加している。また観測では、日本の様々な大学や研究所が持つ望遠鏡やレーダー施設などと組み合わせ、連携が行われるほか、他国が運用している、あるいは今後打ち上げる予定のヴァン・アレン帯やその周辺環境を観測する衛星とも連携した観測も行われる予定となっている。

 衛星はすでにほぼ完成しており、報道公開が行われた時点で、打ち上げが行われる内之浦宇宙空間観測所(鹿児島県肝属郡肝付町)への出荷に向けた、最終チェックが行われている段階にあった。打ち上げは今年度中の予定で、ロケットは日本の小型ロケット「イプシロン」の2号機が使用される。

 打ち上げ後、ERGの運用期間は1年が予定されている。

◆宇宙天気予報と将来の惑星探査に貢献

 ERGによる観測は、長年の謎だったヴァン・アレン帯が形成されるメカニズムの解明につながることが期待されている他、磁場をもつ他の惑星や天体における高エネルギー粒子のふるまいの研究にも応用できると期待されている。

 また、強い放射線の中でも活動できる衛星の技術は、同じく強い放射線環境をもつ木星へ向かう探査機の開発にも役立つ。

 さらに、前述のようにヴァン・アレン帯に存在する放射線は人工衛星や宇宙ステーションに影響するため、ヴァン・アレン帯の状態を予想することが重要となる。そうした予想は、地球の雨や風を予想する天気予報になぞらえて「宇宙天気予報」とも呼ばれており、日本を含め世界中が精度の向上に努めており、ERGの観測もまた、宇宙天気予報の精度向上に貢献することが期待されている。

 ヴァン・アレン帯発見以来の謎を解き、世界第一級の科学成果を出すことを目指し、そして私たちの生活や、将来の人類の宇宙進出にとっても重要な役割を果たすERGの活躍に期待したい。

<取材・文/鳥嶋真也>

とりしま・しんや●宇宙作家クラブ会員。国内外の宇宙開発に関するニュースや論考などを書いている。

Webサイト:http://kosmograd.info/about/

【参考】

・ISAS | ジオスペース探査衛星(ERG) / 科学衛星(http://www.isas.jaxa.jp/j/enterp/missions/erg/)

・ISAS | ジオスペース探査衛星 ERGプロジェクト/宇宙科学の最前線(http://www.isas.jaxa.jp/j/forefront/2013/takashima_miyoshi/index.shtml)

・ISAS | ジオスペース最高エネルギー 粒子誕生の謎を追う 放射線帯の研究 / 宇宙科学の最前線(http://www.isas.jaxa.jp/j/forefront/2006/miyoshi/index.shtml)

・ISAS | 小型衛星ERGによるジオスペース探査 / 将来計画(http://www.isas.jaxa.jp/j/special/2005/plan/17.shtml)

・放射線帯50のなぜ

(http://www.isee.nagoya-u.ac.jp/pub/naze/housha.pdf)

ハーバー・ビジネス・オンライン

最終更新:10/11(火) 16:20

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