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レノボによるPC事業統合は富士通にとって“劇薬”

日経トレンディネット 10/11(火) 12:40配信

 富士通のパソコン事業が、レノボグループに統合される方向で動きだした模様だ。報道によると、レノボグループは、富士通のパソコン事業を傘下に収め、レノボが過半を出資する合弁会社を設立。世界最大シェアを持つレノボの部品調達を生かして、開発/生産コストを削減し、競争力を高めるとともに、収益力向上を図るという。

 この数年の両社の動向を振り返ると、富士通のパソコン事業は、2015年度実績で「3桁の赤字」(今年4月の決算発表会での塚野英博専務/CFOの発言)、つまり100億円を超える赤字を計上し、出荷台数も前年比15%減の400万台にとどまった。2016年2月には、パソコン事業を分社化し、富士通クライアントコンピューティングを設立。2016年度第1四半期は、収益はブレイクイーブンにまで回復していたが、パソコン事業はもはや富士通の中核事業ではなくなっている。

 並行して東芝のパソコン事業やVAIOとの統合を模索したものの、3社の統合はそれぞれの思惑の違いもあって頓挫。その後、東芝が自主再建の道を選び、VAIOが独自性を発揮できる自立路線を歩み始めていたのとは対極に、富士通は依然としてパソコン事業の分離を模索し続けてきた。

 一方のレノボグループは、2011年にNECのパソコン事業を買収し、合弁会社を設立。国内でパソコン事業を行うNECパーソナルコンピュータを通じて、NECブランドの製品の開発、製造、販売を行っている。これはシェア拡大につながるなど、成功事例のひとつと捉えられている。

レノボのメリットはNEC統合よりも薄い

 今回の富士通のパソコン事業の統合も、基本的にはNECのパソコン事業統合と同じスキームを取ることになるのだろう。富士通のパソコン事業がレノボグループに統合されると、国内では約45%のシェアを持つ一大勢力が誕生する。NECレノボ・ジャパングループは、数年後に国内シェア50%獲得を目指す社内方針を掲げているようで、富士通を統合すればこの数字も十分射程距離に入ってくる。

 ただ、富士通の統合がレノボグループにとってメリットになるのかといえば、残念ながら、2011年のNECのパソコン事業統合ほどではないだろうというのが正直なところだ。

 NECパーソナルコンピュータとレノボ・ジャパンの場合は、互いに指向するモノづくりが異なり、それぞれに補完関係にあったといえる。日本人ならでのニーズを反映した付加価値型のモノづくりをするNECパーソナルコンピュータに対して、グローバルモデルで普及価格戦略を打ち出すレノボ・ジャパンといったように、ブランドによるすみ分けができた。営業体制やサポート体制においても、NECのリソースをレノボが利用できた。

 だが、富士通とNECパーソナルコンピュータのパソコン事業には重複部分が多い。互いに、日本のパソコン市場を主軸にフルラインアップを取りそろえ、シェア争いをしてきたのだから当然である。このまま富士通のパソコン事業の統合が進めば、出荷数量のかさは増えるが、製品の一本化など事業戦略の見直しも必要になるのは明らかだ。ターゲットが重複する製品を、同じグループから投入するのは効率的ではない。

 また、NECレノボ・ジャパングループには、国内の生産拠点として、NECパーソナルコンピュータの米沢事業場があり、そこでNECの直販モデルや法人向けモデルと、ThinkPadの一部を生産してきた。こうした生産体制の部分にもメスを入れる必要が出てくるだろう。

 米沢事業場では、年間100万台以上の生産を維持しているが、富士通のパソコン事業を統合することによって、年間200万台を生産する島根富士通、年間100万台を生産する富士通アイソテックの2つの国内生産拠点が加わることになる。いずれの生産拠点も、さらに生産能力を拡大できるキャパシティを持っているが、パソコンだけでは生産体制の拡大という選択肢はすでににない。そして、市場縮小が止まらない国内パソコン市場の動向を捉えれば、国内3つの生産拠点を維持するのは現実的とはいえない。生産拠点を統合するか、海外向け製品を生産するか、あるいはパソコン以外の製品を製造するかといった方向転換は避けられないだろう。

 さらに、開発体制や営業/マーケティング体制も、適正な規模に再編する必要がある。NECパーソナルコンピュータもこの5年間で規模の適正化を進めてきたが、それを大きく上回る再編が行われるかもしれない。

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最終更新:10/11(火) 12:40

日経トレンディネット

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