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これからの株式投資 私が考える最大のリスク要因は(窪田真之)

NIKKEI STYLE 10/12(水) 7:47配信

 今の日本株の相場環境をひと言で表すと「リスクへの恐怖が低下する局面」といえそうです。ブレグジット(英国の欧州連合離脱)を巡る通貨ポンドの急落など、足元もリスクてんこ盛りの状況は変わらないのですが、投資家は個々のリスクに対して冷静に影響を見極める姿勢に変わってきています。
 以下に、今年前半の日本株を急落させた恐怖要因を並べます。
(1)円高への恐怖
(2)資源バブル崩壊への恐怖
(3)米景気失速への恐怖
(4)中国景気失速への恐怖
(5)ドイツ銀など欧州銀行の信用不安への恐怖
(6)ブレグジットへの恐怖
(7)ドナルド・トランプ大統領登場への恐怖
(8)中国の海洋進出・北朝鮮の暴走・過激派組織「イスラム国」(IS)のテロへの恐怖――です。
 いずれもリスク自体が消えたわけではありませんが、投資家はパニックにならず、冷静に向き合うようになってきています。今後はどのリスクに留意すべきでしょうか。
 各種リスク(1)~(8)の中で、日本株に一番大きな影響を与えたのは、円高への恐怖だったと思います。昨年度(2016年3月期)の平均為替レートは、1ドル=約120円でした。一気に20円近く円高が進んだ今年度(2017年3月期)は円高が企業業績の大きな減益要因となっています。
 2月以降、1ドル=110円まで円高が進んだとき、「万が一1ドル=100円まで円高が進んだら、企業業績はぼろぼろになる」と悲観的な予想が出ていました。今は1ドル=100円程度ならば、日本の企業業績は大幅減益にならないと考えられています。
 上記の表から、今期の企業業績予想の推移を見てください。時間とともに、少しずつ業績が下方修正されています。これから、4~9月期決算の発表が始まりますが、さらに下方修正されると予想されます。今期為替の前提をまだ1ドル=105~110円としている企業が多いからです。1ドル=100~105円に為替の前提を変更すると、業績見通しの下方修正が必要になる企業が増えそうです。
 ただし、下方修正後でも今期連結経常利益は1桁の減益にとどまり、連結純利益は増益を維持できると予想されています。1ドル=100~105円に円高が進んだ割に企業業績は堅調といえます。
 円高が減益要因となる一方、資源価格下落の恩恵は増益要因として効いてきます。前期(2016年3月期)は資源価格急落のショックで日本企業の業績は悪化しました。今期は資源価格が持ち直したことにより、急落ショックによる特別損失がなくなることに加え、原料価格の低下が日本の企業業績を押し上げます。
 ただ、1ドル=100円までで円高が終わるか、予断を許さない状況が続いています。鍵を握るのは米金融政策です。米連邦準備理事会(FRB)が年内に利上げすれば、円高圧力は低下すると見ています。しかし、FRBが年内利上げできないと、1ドル100円を割るような円高が進む可能性もあります。
 円高が最大のリスクという状況は変わっていません。リスク要因の中で、もう一つ気になるのが、11月8日に実施される米大統領選です。反資本主義、反グローバル主義の過激発言を繰り返す、共和党のドナルド・トランプ氏が大統領になれば、世界の株はショック安となる可能性があります。現時点では民主党のヒラリー・クリントン氏が大統領になる可能性が高いと考えられますが、フタを開けてみなければわかりません。11月8日が近づくにつれ、金融市場が神経質になる可能性もあります。
 それでは、ヒラリー・クリントン氏が大統領になれば、株は上がるのでしょうか。そうとも言い切れません。クリントン氏も環太平洋経済連携協定(TPP)反対など、トランプ氏に対抗するために、内向きな発言をするようになってきているからです。米国だけでなく、英国にも欧州全体にも、ポピュリズム(大衆迎合主義)が広がっていることが、株式市場にとって重大な懸念材料となっています。
 考えれば考えるほど、投資のリスク材料はいくらでも出てきます。それでも、私が過去25年間ファンドマネジャーをやっていたときと比べて、今がよりリスクが高い状況とは思いません。投資の世界はいつでもリスクてんこ盛りの状況で当たり前なのです。
 それでも、投資判断をしなければなりません。私が一つ、非常に重視しているリスク要因があります。それは投資する株式が企業価値より割高な状況にあることです。そんな状況で買えば、後で株価が急落するリスクがあるからです。ファンドマネジャー時代は何度もそうした経験をしました。その結果、私は相場環境が改善し、株価が割高になってから買うことが最大のリスクだと考えています。
 今は逆です。注目すべきは日本を代表する大型株で配当利回りが3~4%に達している銘柄が多数あることです。リスクがてんこ盛りの状況だからこそ、大型株が割安に放置されているのだと考えています。
 今はリスクは多くても株価が企業価値と比較して割安な銘柄が多いので、時間分散しながら、じっくり投資を始めるのに、いい時機と感じています。
プロのポートフォリオは運用に精通したプロが独自の視点で個人投資家に語りかけるコラムです。原則火曜日掲載で、楽天証券経済研究所所長兼チーフ・ストラテジストの窪田真之氏とレオス・キャピタルワークス社長兼最高投資責任者(CIO)の藤野英人氏が交代で執筆します。
窪田 真之(くぼた・まさゆき) 楽天証券経済研究所所長兼チーフ・ストラテジスト。1961年生まれ。84年慶応義塾大学経済学部卒業後、住友銀行(現三井住友銀行)入行、91年ニューヨーク駐在。92年住銀投資顧問(当時)日本株ファンドマネジャー、99年大和住銀投信投資顧問日本株シニア・ファンドマネジャー。2014年楽天証券経済研究所チーフ・ストラテジスト、15年から所長兼務。大和住銀投信投資顧問では日本株運用歴25年のファンドマネジャーとして活躍した。著書に「投資脳を鍛える!株の実戦トレーニング」(日本経済新聞出版社)など多数。

最終更新:10/12(水) 7:47

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