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「J字型カーブ」~急落し回復する組織コミットメントの変化モデル 雇用環境の変化で現在は成り立たないとの指摘も~

日本の人事部 10/12(水) 7:30配信

組織行動学では、個人が企業など所属する組織に対して抱く愛着や同一視などの心理を、「組織コミットメント」と呼びます。「J字型カーブ」とは、入社から10年目くらいのキャリアプロセスの初期から中期の間に見られる、組織コミットメントの変化のパターンをモデル化したものです。2000年代初頭までの研究によると、ビジネスパーソンの組織コミットメントは多くの場合、入社当初の比較的高い水準から数年後には急激に低下し、停滞期を経て、キャリア中期から徐々に回復・上昇していくことが確認されており、この変化の軌道がアルファベットの「J」を斜めに傾けた形状に近いことから、組織コミットメントの「J字型カーブ」として広く知られるようになりました。しかし現在では、雇用慣行や人事制度の変化により、J字型カーブは必ずしも成立しないと言う声も聞かれます。

急落し回復する組織コミットメントの変化モデル 雇用環境の変化で現在は成り立たないとの指摘も

組織コミットメントは、ビジネスパーソンの自社への愛着や同一視など、個人の組織に対する心理的な関わりを表す組織行動学のキーコンセプトの一つで、これまでに国内でも多くの研究がなされてきました。その組織コミットメントの度合いが、キャリアの発達にともなって、どのように変化するかをモデル化したものが「J字型カーブ」の仮説です。神戸大学大学院経営学研究科の鈴木竜太教授は、1990年代後半に実施した組織コミットメントに関する調査結果を分析し、「J字型カーブ」が現れる期間を以下の四つの段階に分けて説明しています。

新卒採用であれ、中途採用であれ、人は会社に入ると多くの場合、入社前に抱いていた組織や仕事への“期待”と実際に社内で直面するさまざまな“現実”とのギャップから、「リアリティー・ショック」と呼ばれる幻滅の心理を味わいます。その幻滅感の影響で、入社直後から勤続2、3年目までの間に、組織コミットメントがいったん大きく落ち込むのが「J字型カーブ」の第1段階。いわゆる「組織社会化」の過程と重なる時期です。この組織社会化の過程を潜り抜けると第2段階で、仕事や職場への慣れなどもあり、幻滅はもうしないものの緊張感は薄れ、組織コミットメントの度合いは低いまま停滞します。第3段階は、キャリアの初期から中期にさしかかる頃。勤続7、8年目あたりに訪れ、ここで組織コミットメントは回復へと転じます。鈴木教授は、転機の要因として、この時期に行われることが多い昇格とそれに伴う責任ややりがいの自覚を挙げています。そして7、8年目以降の第4段階に入ると、職位が上がるたびに組織人としての使命感や自分自身の存在意義が高まるので、組織コミットメントは右肩上がりのラインで推移し、J字型を描くというのが、2000年代初頭の鈴木教授の分析でした。

「J字型カーブ」は、組織行動学の研究者の間ではよく知られた重要な理論であり、その根拠となった諸研究の調査から20年近く経過した現在においても、説得力をもつ部分が少なくありません。しかし、調査対象が入社から定年まで一つの会社で勤め上げるような人に限られていたり、終身雇用や年功制を核とする伝統的な日本型雇用システムが分析の前提となっていたりしているため、その後、現在に至るまでの雇用慣行や人々の就労観、人事制度などの変化を考えると、「J字型カーブ」は必ずしも現状にはそぐわないのではないか、との指摘もなされています。実際、最近の研究によると、勤続10年目あたり、年齢でいうと30代前半に、仕事や将来への不安、組織との葛藤、私生活の環境変化などから自身の現状に疑問や迷いが生じる「キャリアクライシス」を経験し、組織コミットメントをふたたび大きく低下させてしまう人が多いのです。

最終更新:10/12(水) 7:30

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