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死者32人、無謀すぎる難民の地中海横断、船上はパニック

ナショナル ジオグラフィック日本版 10/12(水) 6:30配信

リビアからイタリアを目指す人々の過酷な船旅を目の当たりにした

 船上の空気は希望から恐ろしい悲劇に変わっていた。大きな木造船1隻と、何艘かの小さなゴムボートに乗り込んだ数百人の移民は、出発地のリビア北岸から12海里(約22キロ)の海域で救助隊に発見された。船は定員の5倍にもなる人数でごった返し、その中に32人の遺体があった。

【写真10点】無謀すぎる難民の地中海横断ルポ

 AFP通信の写真家アリス・メシニス氏は、スペインの支援団体「プロアクティバ・オープン・アームズ」の救助船に同乗していた。移民の船団とたまたま行き合うと、多くの移民たちが必死に叫び始め、海に飛び込む人もいた。

「私たちは、彼らを落ち着かせようとしました。移民船をつなぎ、救助活動を行う地点まで引いて行こうとしたのです」とメシニス氏は振り返る。「救助隊は『飛び込むな、飛び込むな!』と叫んでいました。移民たちは大変なパニック状態でした」

 人道的・政治的状況の不安定なアフリカや中東から逃れる難民の数は、2015年、2016年ともに急増している。2015年は、モロッコ、アルジェリア、チュニジア、リビア、エジプト、トルコの港から100万人を超す難民が脱出し、スペイン、イタリア、ギリシャで保護を求めようと海を渡った。2016年には海路での到着は約30万人と減少してはいるものの、過去の平均と比べれば依然として多い。国連の難民機関は、地中海の渡航を試みる間に死亡または行方不明となった人は、この20カ月で3521人にのぼると発表している。

 リビアは政情不安のため、多くの人が難民となって出国する状況が続いている。10月4日に行われたリビア沖の救助は、晴天が広がっていたこともあり、当初それほど悲観的な雰囲気はなかった。だが、救助隊が移民船の安全を確保したときには、過密状態の中で溺れたり窒息したりして30人以上が亡くなっていた。

 このようなすし詰め状態のボートを、メシニス氏は何百年も前にアフリカを出た満員の奴隷船にたとえた。奴隷貿易と移民船では世紀も経緯も異なるが、悲惨さは変わらないとメシニス氏は感じる。「このような事態は、今回が最初ではありません。そして、おそらく最後でもないのでしょう」

文=Daniel Stone、写真=Aris Messinis/訳=高野夏美

最終更新:10/12(水) 6:30

ナショナル ジオグラフィック日本版

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