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閉店ドミノのセブン&アイ。「セブンイレブン一強」がグループ全体を「背水の陣」に追い込む!

HARBOR BUSINESS Online 10/12(水) 9:10配信

 前回までの記事で述べたように、セブンアンドアイホールディングスでは消費者に加えて自社の「デフレマインド」に苦しみつつ、セブンイレブン以外の「事業切り捨て」とも言える状況となりつつある。

⇒【資料】セブンアンドアイホールディングス全体の営業収益

 さらに、セブンアンドアイホールディングスは、10月6日にグループ史上初となる「3ヶ年中期経営計画」を発表、そのなかで「エイチツーオーリテイリング」(H2O、阪急阪神グループ)と資本業務提携し、そごう神戸店(神戸市中央区)、そごう西神店(神戸市西区)、西武百貨店高槻店(高槻市)の百貨店3店舗を阪急阪神百貨店に経営譲渡する方針を発表した。これにより、セブンアンドアイホールディングスのより一層の「セブンイレブン偏重」が進むことは確実だ。

 セブンアンドアイホールディングスが、ここまで大規模なリストラを性急に推し進めるのは一体なぜであろうか。

◆セブンイレブンの高利益率の影で他事業への情熱失う!?

 こうしたセブンアンドアイホールディングスの「セブンイレブン以外切り捨て」の大きな背景にあると考えられるのが「セブンイレブンの異常に高い収益率」だ。

 2016年2月期のセブンアンドアイホールディングス全体の営業収益は6兆0457億円(0.1%増)、営業利益は3523億円(2.6%増)。そのうち、飛びぬけて営業利益が大きいのが、コンビニエンスストア事業(セブンイレブン)で、その額は3041億円。つまり、グループ全体の営業利益のうち、実に9割近くをセブンイレブンが占めていることが分かる。それに続くのが、金融事業(セブン銀行)で、営業利益は497億円。かつての事業の中核であったスーパーストア事業(イトーヨーカドー、ヨークベニマルなど)は営業利益72億円、百貨店事業(そごう・西武、ロフトなど)は営業利益38億円で、スーパーは営業利益全体の約2%、百貨店は約1%しか稼ぐことができていない。さらに、フードサービス事業(デニーズなど)はほぼ収支均衡状態、通信販売事業(いわゆる「オムニセブン」ではなく2013年に買収した通販大手「ニッセン」)については赤字となっている。

 つまりセブンアンドアイホールディングスは、完全な「セブンイレブン1強状態」となっているのだ。

 しかも、近年のセブンイレブンの利益率は、実に30%を超えており(2015年2月期で31.6パーセント)、これは同業他社であるローソン(同、19.5パーセント)、ファミリーマート(同、12.3パーセント)の約2倍前後。小売業界では他社の追随を許さないほど高い水準となっている。この高い利益率の裏には、これまでのスーパー経営などで培ったセブンアイグループの高いデータ分析力と素早い経営判断力もあるとされている。

 ここ数年間に閉店した、もしくは閉店予定のそごう・西武や、イトーヨーカドーなどうち、一部の店舗は「改装を行えば収益が改善される」と考えられるものも少なくない。一方で、今回発表された「3ヶ年中期経営計画」においても、残念ながら今後営業を続けるグループ内の百貨店や総合スーパーに対する積極的な新規投資が語られることはなかった。

 このことは、セブンアンドアイホールディングスとしては、百貨店や総合スーパーに投資するよりも、同じ額をコンビニエンスストア事業に投資したほうがはるかに収益性が高くなるため、百貨店やスーパーに対し積極的な新規投資を行いたくないという意思を大きく反映したものであろう。

◆業績「大幅下方修正」の衝撃

 さらに、セブンアンドアイホールディングスが性急なリストラとエイチツーオーリテイリングとの業務資本提携に至った背景にあるのが「井坂新体制の実績づくり」だ。

 カリスマ経営者であった鈴木敏文CEOの電撃辞任後、今年5月に就任したばかりの井阪隆一社長としては、セブンアンドアイホールディングスの大株主であり「もの言う株主」としても知られる米ファンド「サード・ポイント」に対して「わかりやすい経営改善策」を示すことが急務であったのだ。

 もう1つ、こういった性急な経営改革を行う背景には、事業の中核である「セブンイレブン」も安泰とは言えない状態となっていることも大きいであろう。

 セブンアンドアイホールディングスは9月30日に2017年2月期のグループの業績予想を大幅に下方修正することを発表している。このなかで、グループの純利益は従来予想の1720億円から大きく減って800億円になる見通しであるほか、不振が続くそごう・西武、イトーヨーカドーの減損処理(のれん減損、不良在庫の一掃などに起因するもの)により、606億円の損失を計上することを明らかにしている。しかし、最も特筆すべきことは、これまで稼ぎ頭であった「コンビニエンスストア事業」(セブンイレブン)においても大幅な業績の下方修正が行われ、営業収益が前期割れとなる見込みが発表されたことだ。

 実は、この業績の下方修正には、世界的な原油安も大きく影響している。アメリカなどのセブンイレブンは、セブンイレブンが運営するガソリンスタンドを併設した店舗が多く、原油価格や為替相場がセブンイレブン本体の業績に大きく関わってくるのだ。

 このように、セブンアンドアイホールディングスにとってグループの屋台骨であるセブンイレブンは、他事業以上に世界情勢に大きく翻弄されるという危うさも秘めている。

コンビニ各社の経営統合が進み、競争が激化する昨今。「背水の陣」ともいうべき「セブンイレブン1強状態」を推し進めることは、果たしてグループ全体にとって吉と出るか、凶と出るか。また、関西の雄・H2Oリテイリングとの業務資本提携が、大きな相乗効果を上げることができるのか否か。セブンアンドアイホールディングスの今後が注目される。

<取材・文・撮影/都市商業研究所>

【都市商業研究所】

若手研究者で作る「商業」と「まちづくり」の研究団体。Webサイト「都商研ニュース」では、研究員の独自取材や各社のプレスリリースなどを基に、商業とまちづくりに興味がある人に対して「都市」と「商業」の動きを分かりやすく解説している。Twitterアカウントは「@toshouken」

※都商研ニュースでは、今回の記事のほかにも下記のような記事を掲載中

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ハーバー・ビジネス・オンライン

最終更新:10/14(金) 15:57

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