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企業が衰退する要因は「やる気の源泉が画一的」な企業体質にあり!?

HARBOR BUSINESS Online 10/12(水) 16:20配信

「上司が部下をマネジメントできない」、「シニアが若手とコミュニケーションできない」、「セールスが顧客をハンドルできない」、「学校が父兄からの申し出の対応ができない」……リーダーシップトレーニングを実施していると、このような相談を受けることが増えている。

⇒【資料】所属組織別 狩猟型と農耕型の割合

 身に付けるべきスキルをパーツ分解して、パーツスキルを反復演習で体得する「分解スキル・反復演習」を実施してみると、これらの問題に共通する、いわばベースとなるスキルが欠けていることがわかってきた。このベーススキルが、モチベーションエリアを見極めて、モチベーションエリアに応じたコミュニケーションをするスキルである。

 モチベーションエリアとは、人それぞれが持つ、やる気が起こりやすい領域で、私は、「目標達成」、「自律裁量」、「地位権限」、「他者協調」、「安定保障」、「公私調和」の6つのエリアに分けている。そして、前の3つのエリアでモチベーションが上がりやすい人を牽引型(通称、狩猟型)、後ろ3つのエリアで気持ちが高まりやすい人を調和型(通称、農耕型)と呼んでいる。どのエリアが高いか、狩猟型か農耕型かということは、良し悪しではなく、人それぞれの特性だと私は考えている。

 相手のモチベーションエリアが「公私調和」であることがわかっていれば、徹夜して「目標達成しろ」と言う上司はいないだろう。「地位権限」志向の若手に、自分がそうだからといって無理するなとシニアな先輩が言ったら、若手は不満に思うに違いない。モチベーションエリアを無視したコミュニケーションが横行していることが、マネジメント力低下の大きな原因だと思えてならない。

◆所属組織でも大きく異なるモチベーションエリア

 実は、この狩猟型と農耕型の割合、そしてモチベーションエリアの6つのエリアの割合は、直近の分解スキル・反復演習の参加者538名の結果をみる限り、所属する組織によって大きく異なっている。

 例えば、外資系IT企業社員が狩猟型社員の割合は64.2%と突出している一方で、銀行員は38.4%と大きな隔たりがあるのだ(表1参照)。外資系IT企業の中でも、最も狩猟型の高い企業では、その割合は73.2%にのぼる。組織の4人に3人は狩猟型なのだ。

 外資系IT企業社員と銀行員の6つのモチベーションエリアの割合をみると、表2のように台形のグラフが逆に向かい合っているように、正反対であることがわかる。外資系IT企業社員の「目標達成」志向と「地位権限」志向は群を抜いており、銀行員の「他者協調」志向と「公私調和」志向は、各所属組織の中で最も高く、台形の底辺の両端の如く、グラフを際立たせている(表2参照)。

 変革を先取りしたいIT業界と、堅確性を求められる銀行とで、モチベーション志向が狩猟型と農耕型とに分かれるのは、予想通りの結果といえる。しかし、一見、意外なモチベーションエリアを示した組織もある。

◆今日日の大学生は「農耕型」!?

 例えば、コンサルタント。「自律裁量」がひときわ高いことは、予想通りだ。一人一人のコンサルタントに対する裁量が大きく、いわば自らの腕で、顧客に対峙していく姿を現わしているように思える。一方で、銀行に次いで、「公私調和」が高いことは、私には意外だった。

「きつい、(労働時間あたりの)給与が引く、休暇がとれない、顧客に無理難題を言われる」・・・ときった、現代の4K職場とも言われるようになった、コンサルタントが、現代のコンサルタント志望者のモチベーションエリアと合致しなくなっている端緒かもしれない。

 官民統合企業社員の「他者協調」が比較的高かったことは、私には良い兆候だと思われる。M&Aにおいて買った会社と買われた会社の対立は、極めて良く見られる状況と言わざるを得ないが、この企業のPMIをサポートしてきた身としては、形だけの統合に留まらず、両会社のメンバーのマインドや行動の統合が実質的に図られつつあるように思えてならない。

 大学生の「自律裁量」が銀行員に次いで低く、農耕型に偏っていることは、私は危惧している。ビジネスモデルの変革に直面している今日、これからその担い手になる層の狩猟型を、増やしていくことは不可欠だと思うのは、私だけだろうか(表3参照)。加えて、私は、モチベーションエリアに関して、もうひとつ、大きな危惧を持っている。

◆画一的なモチベーションエリアが企業を滅ぼす

 それは、私の演習参加者の演習結果からは、モチベーションエリアは、所属組織によって大きく異なるが、職位や職務によっては相違がみられないということだ。特に、職務によって相違がないということに大きな危惧を持っている。

 銀行の営業担当も、事務担当も農耕型だ。外資系IT企業からも、さまざまな職務の方が参加したが、個人差はあるにせよ、狩猟型に偏っている。新規事業担当者や新規営業担当者は、狩猟型が多くなることを、銀行であっても、経営者は意図しているのではないか。

 外資系IT企業であっても、調整部門は農耕型の占率が高まるのではないか。職務に合致したモチベーションエリアの人材が枯渇している状況に直面しているのではないか。採用段階では、有していた他のモチベーションエリアが、組織のマジョリティのモチベーションエリアに影響を受けて標準化されてしまったのではないか。企業のビジネスモデルによって、狩猟型か農耕型かは決まってこよう。しかし、職務毎に相違なく画一的なモチベーションエリアを示すようになってしまうことは、企業の脆弱性を露呈しているように思えてならない。

※「モチベーションエリアを見極める」スキルは、山口博著『チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社、2016年3月)のドリル28で、セルフトレーニングできます。

【山口博[連載コラム・分解スキル・反復演習が人生を変える]第18回】

<文/山口博>

※社名や個人名は全て仮名です。本稿は、個人の見解であり、特定の企業や団体、政党の見解ではありません。

【山口 博(やまぐち・ひろし)】グローバルトレーニングトレーナー。国内外金融機関、IT企業、製造業企業でトレーニング部長、人材開発部長、人事部長を経て、外資系コンサルティング会社ディレクター。分解スキル・反復演習型能力開発プログラムの普及に努める。横浜国立大学大学院非常勤講師(2013年)、日経ビジネスセミナー講師(2016年)。日本ナレッジマネジメント学会会員。日経ビジネスオンライン「エグゼクティブのための10分間トレーニング」、KINZAI Financial Plan「クライアントを引き付けるナビゲーションスキルトレーニング」、ダイヤモンドオンライン「トンデモ人事部が会社を壊す」連載中。近著に『チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社、2016年3月)がある。慶應義塾大学法学部卒業、サンパウロ大学法学部留学。長野県上田市出身

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最終更新:10/12(水) 16:20

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