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なめるな危険! 「電気自動車レース」の超魅力

東洋経済オンライン 10/12(水) 6:00配信

 ヒュルルルル、ヒュッ、ヒュイーン、ヒュイーン――。山と海の間にそびえる高層ビルの隙間を縫うように派手な車体が駆け抜ける。電気自動車(EV)の世界最速を決める「フォーミュラE(FE)」は今年で三年目を迎えた。今年の開幕戦はここ香港で開かれる。近未来バトルをこの目で見るため、はるばるやってきたシニア記者である。

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 10月8日土曜日の午後に香港入りしたシニア記者は、ホテルに荷物を置くと桟橋の上に立つマリタイム・ミュージアムを目指した。

 港に面した公道を通行止めにして作った二日間だけのサーキット。会場にはレーシングチームやスポンサー企業のための白いテントが立ち並び、飲み物やスナックを売る屋台もある。お祭り気分である。

■フリーランスは入れない? ! 

 ウキウキしながらメディアセンターに向かう。普段は観光客向けの海洋博物館がメディアの受付になっている。関係者のご助力で登録は済ませてあったので、パスポートで本人確認をして取材パスを受け取るだけのはずだった。

 しかし受付でパスポートを提示すると、事務局のポロシャツを着た2人の女の子は、パソコンの画面を睨んで固まってしまった。ここまで来て会場に入れなかったらシャレにならない。

 「カンパニー・ネーム?」

 小首を傾げて彼女が聞く。

 「ノー・カンパニー、フリーランス!」

 我ながら小学生並みの英語である。

 「フリーランス?」

 「イエス」

 しばしの沈黙。どうやらパソコンのリストはメディア名で登録されているらしい。これだったら、有名な東洋経済オンラインさんの名前を借りればよかった。

結局入ることはできたのか?

 「OK」――。待つこと10分強。彼女は「仕方ないわね、これ使って」という感じで、裏が真っ白なパスを差し出した。大メディアの皆さんは、名前入り顔写真入りの取材パスを受け取っている。ワシも事前に写真を送ったのに…。

 いえね、日本でもありますよ。大メディアの皆さんはプリントされた名札で、フリーランスはマジックで手書きの名札、とかね。全然、気にしてません。入れてもらえるだけありがたいですから。

■ヒュ、ヒュイーン…耳をつんざく爆音はない

 しかしバックスタンドにたどり着くと、気分はすぐにハイになった。ヒュッ、ヒュイーン。ヒュッ、ヒュイーン。銀、青、赤、色とりどりのマシーンが近未来的な音を残して目の前を駆け抜ける。「シェイクダウン」と呼ばれる試験走行の真っ最中である。

 バックスタンドに面した直線を駆け抜ける時には最高時速225㎞に達するが、F1レースのような耳をつんざく爆音は聞こえない。隣の人と余裕でおしゃべりできるレベルである。モーターで走る電気自動車には排気音がないのだ。もちろん、排気ガスも出さない。

 ウォン、ウォン、ウォン。カッ、カーンという、五臓六腑に染み渡るF1カーの排気音になれたレースファンには、いささか物足りないかもしれない。だが、ヒュッ、ヒュイーンというFEのモーター音には、スターウォーズ的な未来感が漂う。そして、その静かさとクリーンさゆえ、人の集まりやすい市街地での開催が可能になったことも忘れてはいけない。F1の威力をマッチョでパワフルとすれば、FEはクリーンでスマート。今風なのである。

 今年のFEは香港を皮切りにマラケシュ、ブエノスアイレス、メキシコシティ、モンテカルロ、パリ、ベルリン、ブリュッセル、ニューヨーク、モントリオールを転戦する。すべて舞台は市街地である。

 FE主催者はマラソンのように自治体の協力を得てコースの公道を通行止めにし、街のど真ん中に二日間限定のサーキットを出現させる。F1の公道レースはモンテカルロとマカオくらいのもので、あとは人里離れたサーキットで開催される。日本の鈴鹿サーキットなど、交通アクセスは絶望的で、観客動員のネックになっている。

 参戦10チームの中にはフランスのルノー、シトロエン、ドイツのアウディ、英国(? )のジャガーといった欧州自動車のメーカーやインドのマヒンドラが名を連ねる。電気自動車(EV)ベンチャーでは中国のネクスト、テチータ、中国系米メーカーのファラデー・フューチャーなどが参戦している。

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最終更新:10/12(水) 11:35

東洋経済オンライン