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不二家のキャンディが中国市場で売れる理由

東洋経済オンライン 10/12(水) 6:00配信

 不二家といえば老舗の洋菓子チェーンとして有名だ。創業は1910年(明治43年)。全国の洋菓子店(950店)の店頭を飾るキャラクター「ペコちゃん人形」(1950年、6歳の女の子として誕生)を連想する方も多いだろう。最近では「ルックチョコレート」や焼き菓子の「カントリーマアム」などがおなじみだ。

 日本以外にも「ペコちゃん」が大活躍している国がある。中国だ。売れているのは、なつかしい「ポップキャンディ」。白い棒に飴がついていてペロペロとなめる、あのキャンディだ。日本では1954年に発売され大人気を博した後、現在はピークを過ぎたが、中国では「不二家棒棒糖」の名前で人気が継続。中・高級スーパーを中心にしっかり売れている。小売店での価格は一袋20本入り13元(約200円)が標準的だが、現在は売上高100億円規模を狙えるところまで成長している。

■他社より遅れた中国進出

 同社は中国事業(本拠は浙江省・杭州)の詳細については公開していないものの、同国での売上高は前々期約30%増、前期も22%増と好伸。国内事業に比べて採算も良い。同社は2007年に期限切れの牛乳を原料としたシュークリームを製造し経営が混乱、翌年に山崎製パンの子会社となった経緯がある。中国事業は本格復活への大事な柱の一つだ。

 では、なぜ中国でポップキャンディが売れるのか。同社の中国事業は最初から決して順風満帆だったわけではない。

 中国進出はいまから12年前の2004年にさかのぼる。手さぐりで日本の製品を輸入する形でビジネスを始めた。棒つきのポップキャンディは専用ラインでの生産が必要なため、まずは日本製のポップキャンディ(4種のフルーツ味20本パック)の輸入販売を始めたが、これが好調だった。

中国ではミルク味が人気

 ただ、当時から一個一個のキャンディを個装して袋入りで売っているメーカーは中国国内にごまんとあった。しかも、日本でもおなじみの「チュッパチャップス」のように棒がついている飴も、欧州メーカーがすでに先を制する形で販売済み。不二家には入り込む隙がないようにも見えた。

 だが、意外にもキャラを前面に出している欧州メーカーはあまりなかった。しかも、不二家の伝統的なキャラである「ペコちゃん」だけでなく、「そのボーイフレンドである“ポコちゃん“への潜在的な人気が高いことがわかった」(当時の中国事業を担当していた同社の幹部)。日本ではポコちゃんの存在はさほどではないが、当時、中国では「一人っ子政策」もあり、女の子よりも男の子のキャラのほうがむしろ人気があったのだ。

 そこで同社は不二家得意の「キャラ」を前面に出すことにした。小売店の什器を工夫したりするだけでなく、駅の構内やバスラッピングなどでの広告、TVCMも展開。これがプラスに働いた。

 日本でポップキャンディといえば、フルーツ味が主体。だが、中国ではミルク味に加え、梅味まで商品構成がひろがる。とりわけ人気の高いのがミルク味だ。中国では現在も牛乳の流通に問題を抱えている。そのため「日本メーカーの安心」がウリとなり、中高級イメージの維持にも役立っている。

 今年11月には杭州の中国本社内にある第3期工事が竣工予定で、現在の2倍の生産量に向け一歩踏み出すことになる。だが、同社の幹部は慎重な姿勢を崩していない。

■消費の構造変化には警戒感

 中国でもコンビニエンスストアが発展するにしたがって、従来からの「20袋入り」へのニーズは徐々に薄れている。同社はコンビニ向けを中心に「4本入り」や「8本入り」などの小袋タイプを発売する一方、食べごたえのある1本10グラムの大型タイプ「大棒棒糖」(通常は6.25グラム)も発売するなどして、中国の消費構造の変化についていこうとする。こうした商品はむしろ20本入りよりも採算が良く、同社にとっては歓迎だ。

 一方で、既存タイプは他のメーカーとの競争も激しくなる。このところ中国で消費不振から大型スーパーが相次いで倒産していることにも、同社は警戒を強める。

 政治リスクも消えたわけではない。「何年かに一度、反日デモや反日ムードが盛り上がる。その際、商品が売り場から撤去されたり、中国人の社員が嫌な思いをすることがあった」(不二家(杭州)食品有限公司の日野和明・董事長兼総経理)。さらに、直近の元安は、現地の収益とは直接関係はないものの不二家の連結決算上はマイナス要因となる。

 不二家は今期、3年ぶりに復配できるかどうかというところまで回復した。国内の洋菓子事業は不採算店数が縮小。菓子事業でもカカオ70%配合の薄版チョコレート「カカオ70」などを発売するなど、国内事業の構造改革は徐々に進んでいる。だが、それだけで本格復活はおぼつかない。中国における「ポコちゃん」「ペコちゃん」への期待は、これからも大きくなりそうだ。

福井 純

最終更新:10/12(水) 10:35

東洋経済オンライン