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少年のように、時には素人っぽく――戦争写真家が撮る日常 - Q.サカマキ Instagramフォトグラファーズ

ニューズウィーク日本版 10/12(水) 16:12配信

<ベテランの域に達しながらも、純粋さや無邪気さを持ち合わせたイランの写真家、マジッド・サイーディ。2013年の世界報道写真コンテスト受賞で名を馳せた彼は今、紛争地よりも日常に興味を抱いているが......>

 ベテランの域に達しながら、少年のような感性を持ち続けることは並大抵のことではない。洗練された力量の中に、純粋さや無邪気さを持ち合わせるだけでなく、意識的にしろ無意識的にしろ、時として素人っぽく見えることまで孕まなければならないからだ。大きな自信が付随していることも条件になる。今回紹介するイランの写真家、マジッド・サイーディは、そんな数少ない写真家の1人である。

 サイーディの作品と名前をはっきりと印象づけたのは、2013年のワールド・プレス・フォト(世界報道写真コンテスト)、そして2014年のFotoEvidence Book Awardを受賞した彼の写真集『Life in War』だった。戦時下のアフガニスタンを撮影した作品である。

【参考記事】世界報道写真入賞作「ささやくクジラたち」を撮った人類学者

 そうしたサイーディの作品で目を引くのは、前線の兵士たちの緊張を伴った写真ではなく、子供たちやふつうのアフガニスタン人が作り出す日常だ。大半は、彼が黒子のような状態で、その現場に見事に同化して撮影している。それが見る者に、その場にいるかのような錯覚を起こさせる。アフガニスタンの子供たちと一緒に遊んでいる気分になったりするのだ。

Afghan Kids playing in Cartier Sakhi cemetery in central #Kabul #Afghanistan Majid Saeediさん(@majidsaeedi)が投稿した写真 - 2015 5月 19 7:50午前 PDT アフガニスタン




An abandoned boat on nearly dried Urmia Salt #Lake which is the second biggest salt lake in the world. The lake has become dried because of the incorrect policies in construction of more than 100 dams around and 15km highway across it. In the case of continuing the trend of dryness of the lake, many toxic substances will polluted the air which will bring serious respiratory diseases for the people in the region كشتي بجا مانده بر روي درياچه اروميه تقريبا خشك شده. درياچه اروميه دومین دریاچهٔ بزرگ آبشور دنیا میباشد. درياچه در اثر سياستهاي غلط در ساختن بيشتر از ١٠٠ سد اطراف ان و كشيدن ١٥ كيلومتر بزرگراه روي آن در حال خشك شدن است. در صورت خشک شدن دریاچه بسیاری از از مواد سمی هوازی شده و خطرات بیماریهای تنفسی برای زیستبوم و مردم منطقه بوجود خواهد آورد. Majid Saeediさん(@majidsaeedi)が投稿した写真 - 2015 11月 22 9:22午前 PST イランのウルミア湖


 同時に、破壊された建物や手足を失った子供たちなどの写真要素や構図は、緻密に計算されている。それが織り重なり、一見、微笑ましい風景であるがゆえに、戦争の本質的な何か、あるいはその空気から逃げることのできない抑圧感が漂ってくるのである。

 これは、彼が16歳という早い時期に写真を始め、18歳のときにはすでに――彼自身によれば偶然らしいが――イラン・イラク国境沿いで難民を撮り始めていたためかもしれない。その後は、イランのさまざまなニュース・エージェンシーでキャリアを積み、15年以上も紛争地帯を取材してきた。当初から戦争写真家にあこがれ、そうした人生を送りたかったという。実際、生と死が隣り合わせである紛争地での経験は人生でもっとも貴重なものの1つになっている、とサイーディは言う。

【参考記事】難民キャンプで生まれ育ち、写真家になった男

 だが、今は最前線には興味がない。それよりも数歩下がって、一般人の日常や、多くの人に影響を与える問題を探っていきたい、と彼は言う。インスタグラムで発信しているが、イランのウルミア湖では地球温暖化と近辺に100カ所以上設置されたダムの影響で消滅化と汚染被害が出始めており、そうした環境問題もその1つだ。彼が得意とし、より好む白黒写真だけでなく、カラーでも撮られている。

 とはいえ、紛争地から興味が失せたわけではない。紛争地の日常と民間人の生活はむしろ、今後も彼の主な被写体であり続けるだろう。「次のプロジェクトは?」という問いには「現在は、シリアと北朝鮮のビザ待ち」という答えが返ってきた。

今回ご紹介したInstagramフォトグラファー:
Majid Saeedi @majidsaeedi

Horseman make his horse ready for a show #tehran Majid Saeediさん(@majidsaeedi)が投稿した写真 - 2015 1月 22 9:29午前 PST テヘラン

Q.サカマキ

最終更新:10/12(水) 16:12

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