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卸売業者は「中間搾取」をしているだけなのか? 短絡的な卸売業者性悪説を斬る!

デイリー新潮 10/12(水) 11:46配信

■漁業者性悪説のウソ(2)

1匹3300円から60円まで極端な値動きを見せた今年のサンマ価格。魚価の乱高下は、いったい何が原因なのか? 

経済学者の中には、複数の卸売市場が介在する複雑な流通システムを槍玉に挙げる者もいる。つまり魚市場関係者による「投機的取引」と「中間搾取」の横行が、魚価を不当に乱高下させているというのだ。

しかし、漁業経済学者の濱田武士・北海学園大学教授は、「卸売業者性悪説も、漁師性悪説と同じように、業界の実情をよく知らない人の妄説だ」と言う。

「もし卸売業者を排除するような市場外流通や規制緩和を進めれば、漁業全体が衰退するでしょう。それは日本の豊かな食文化を捨てて、アメリカのような単調で規格化された食文化を選ぶことを意味します」

どういうことか? 濱田教授と藻谷浩介さんの対談が収録されている『和の国富論』(新潮社刊)から、一部を再構成してお伝えしよう。

■「魚の目利き」卸売人が果たす役割

藻谷 ご著書の中では、漁業問題を、漁業者側の問題としてだけでなく、流通サイド、そしてわれわれ消費者側の問題としても描いていました。

濱田 『日本漁業の真実』(ちくま新書)にも書いた通り、漁業の流通は、基本的には生産者→産地卸売市場(卸売・仲買人)→消費地卸売市場(荷受・仲卸業者)→小売業・外食産業→消費者というルートを辿ります。そこに漁協や商社、場外問屋なども絡んで、とても複雑になっています。

藻谷 それが私のように不勉強な部外者には、中間搾取が横行した、とても非効率な流通機構に見えるわけですね。

濱田 でも、これは日々の天候や海の状況に左右される漁業の特質に合せて発展してきた仕組みです。供給側がどこでどの魚がどれだけ獲れるかわからない一方で、需要側は必要な魚が安定的に仕入れられないと困る。しかも、魚は青果や肉に比べて鮮度のオチが早い。そこで二つの卸売市場を挟んで、素早く広範囲の需給を調整する仕組みができたわけです。

藻谷 保存が利かないから、同じイワシでも、多く獲れたら安くなり、獲れなかったら高くなる。漁業はもともと究極の市場主義の世界なんですね。

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最終更新:10/12(水) 13:39

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