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高いけど旨い魚を食べる! それが日本社会の豊かさを守る「モノサシ」だ

デイリー新潮 10/12(水) 11:47配信

■漁業者性悪説のウソ(3)

世界有数の魚食大国・日本。1人当たりの食用魚介類供給量は、人口100万人以上の国の中では世界一だが、近年、急激に「魚ばなれ」が進んでいる。

減っているのは消費量だけではない。昔に比べて、日本人が食べる魚種が少なくなり、スーパーに並ぶのは定番魚種の切り身ばかり。丸魚はめっきり減った。

「このままでは日本は食文化まで、〈アメリカ化〉してしまう」と警鐘を鳴らすのは、ベストセラー『里山資本主義』で知られる藻谷浩介さん。

「じつは魚食文化こそが日本の豊かさを測る〈モノサシ〉になるんじゃないかと気づいたんです。魚食を守るためには、まさに国土と国民の総合力が問われますから」。

どういうことか? 藻谷浩介さんの『和の国富論』(新潮社刊)から、漁業経済学者の濱田武士・北海学園大学教授との対談の一部を再構成してお伝えしよう。

■なぜ北陸の魚は「高いけど旨い」のか

藻谷 定番の刺身盛り合わせパックばかりでは、消費者側の魚食リテラシーも下がる一方だと……。

濱田 消費者から「魚に骨があった」とクレームが入るという話をよく聞きます。スーパーでは骨抜きをした加工品でないと売れないらしいですよ。

藻谷 もはや魚に鱗があるということすら、みんな忘れている。たまに丸魚をもらうと、鱗落としをせずにそのまま焼いてしまってエライ目にあったとか(笑)。

濱田 鱗付きの丸魚は、鮮度の保ちが良いから、本当の魚好きは鱗付きを好むものなのですが……。魚は良し悪しが非常に個別的なので、味にこだわりがある人ほど、一匹一匹モノを見て判断したいわけです。魚の目の透き通り方を見たり、お腹の出具合(餌が入っていない方が臭みがなく美味しい)とかで鮮度や味を判断する。

藻谷 なるほど。農産物なら、同じ畑で穫れたものは大体同じ品質なので、良い農場を見つけたら、後はそこから直送してもらえばいい。でも、魚は同じ海で獲れたものでも、一匹一匹確認しないと品質がわからない。だから、プロの板前は、わざわざ毎日市場に出かけて行って、魚を仕入れるんですね。

濱田 そのようなプロの板前と卸人の存在が、魚食文化の最後の砦だと思っています。板前と卸人の間には、まだ「いいものを出したい」というプロの矜持が残っています。ただ、接待文化がなくなって、料亭やちゃんとした料理屋がどんどん減ってしまって……。

藻谷 みんな居酒屋チェーンに取って代わられてしまい、料理人が腕を振るう場所がなくなってしまった。寿司屋もチェーンの回転寿司が大隆盛。あとコンビニとかの中食部門も急成長しています。

濱田 それらは当然、その低価格に見合う原料しか使わないので、輸入の冷凍モノばかりになります。

藻谷 とにかく安けりゃいいという世の中になってしまいました。

濱田 でも北陸では、まだ「いい魚をいい値段で食べる」という文化が生き残っていますね。金沢なんかは、本格的な料理人が集まっています。だから、ちょっとした料理屋に入っても、時価で結構いい値段を取られる(笑)。

藻谷 そうそう、高くてビックリ(笑)。北陸はもともと地産地消の経済が発展していた地域で、魚も地元の美味しいものを食べている。とくに福井や富山などは比較的単身世帯が少なく、3世代世帯とか大家族が多いから、大きな丸魚でもちゃんと食べ切れる。

濱田 北陸が幸福度ランキングで1位から3位までを独占しているのは、魚のおかげかも(笑)。ちなみに私の出身地の大阪府は最下位です……。

藻谷 金沢市中央卸売市場も、圏域の人口の割には水産物の取扱高では全国上位に食い込んでいます。

濱田 ブリとかズワイガニとか近海で良いモノが揚がる上に、やっぱりいい値段が付くので、モノによっては太平洋側で獲れた魚まで金沢に集まってくる。築地よりも高く売れたりしますから。
 でも、いくら北陸の魚食文化の豊かさについて話しても、経済至上主義の人に言わせると、「北陸なんて全然ダメじゃん」ってことになるんでしょうね。

藻谷 彼らから見れば、魚も単なるモノ。旬だとか鮮度とかは面倒なだけ。そんな不便なモノは食べない方が経済は成長するなんて、本気で思っているんじゃないですか。

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最終更新:10/12(水) 19:47

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