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小山昇:本当のライバルとは「同業他社」ではなく「社会」と「自分」である

nikkei BPnet 10/12(水) 9:20配信

地元のお客様に愛されてきた店がなぜ閉店したのか

 最初に、いまは倒産してしまったA社のケースをご紹介しましょう。

 A社は都下のベッドタウンを中心に複数の飲食店を経営していました。どの店もリーズナブルな値づけと味の良さで地域一番の繁盛店でした。ところが年を追うごとにお客様が次第に減っていき、一店舗、また一店舗と閉店させざるを得なくなってきた。そしてついには事業停止…。まあ、よくあることですね。似たような話はだれしも直接間接に耳目にしたことがあるでしょう。

 どうしてA社はお客様を減らしてしまったのでしょうか。別に大幅値上げをしたわけでもなく、味が落ちたわけでもない。常に良心的な経営を心がけ、地元のお客様にも愛されてきた店がなぜ閉店の憂き目を見ることになってしまったのでしょうか。理由は簡単です。お客様の変化について行かなかったからです。

 「お客様の変化について行かなかった」とはどういうことか。日ごろ私の拙稿をお読みくださっているあなたなら、すぐに見当がつきます。「ははあ。自社をお客様の変化に合わせて変革していくことを怠ったんだな」。そう、まさにご明察です。では、そもそも「変化に合わせて自社を変革していく」とは、具体的にはどういうことなのか。ここではより突っ込んでA社の倒産劇の構造を解説してみましょう。

都市部では5年で3割もの住民が入れ替わる

 大都市およびその近郊では、住民はきわめて流動的です。簡単にいえば、引っ越して行ったり転入してきたりが非常に多い。武蔵野ではおよそ半世紀にわたり地域のご家庭にダストコントロール製品の配達・回収をしていますが、その経験に照らしていえば5年で実に3割もの住民が入れ替わります。進学・就職・結婚・出産・転勤…。人生にはさまざまな転機や節目があり、その都度人は頻繁に「動く」。それはあなたが想像する以上にです。

 以上を前提に、A社の話に戻しましょう。

 地場密着型の経営をしているA社にとって、「5年で3割もの住民が入れ替わる」ことは、「5年で3割の常連客を失う」とほぼ同義です。もちろん転出したぶんだけ転入もあるが、新しい住民はA社の店など知りません。店の看板は目にするでしょうが、それはただの「風景」です。入ってみようという気にはなかなかならないのです。

 一方、これまでA社の後塵を拝していた二番店や三番店は、なんとかA社のお客様を奪い取ろうと積極的に街頭でビラまきをしたり、割引券をポスティングしたりします。当然、新しい住民はどうしてもそちらに流れます。そしてその店の常連になり、以降はA社のお客様になることはまずありません。これこそがA社が衰退していった真の「構造」です。

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最終更新:10/12(水) 9:20

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