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ジェンダー問題初の訴訟。一見、問題のないチラシに見えるが、なにがいけないのか

週刊女性PRIME 10/13(木) 18:30配信

 9月26日、滋賀県栗東市の子育て啓発チラシやポスターが『男女共同参画社会基本法違反』として訴えられた。一見、問題のないチラシに見えるが、なにがいけないのか。同市市長を訴えた名古屋学院大学の早川洋行教授に話を聞いてみると──

「男は社会的、女は家庭的」

 ここに掲載した1枚のチラシ。2014年に滋賀県栗東市が作成した子育ての啓発チラシ・ポスター約4万枚のうちの1枚で「市役所や公共の施設で配布しています。PTAや自治会の研修に私どもが呼ばれチラシを使用して話すこともあります」(同市学校教育課)という自治体広報物だ。

 その中身に「おかしい」と異議申し立てをしたのは、社会学を専門とする名古屋学院大学の早川洋行教授。男女共同参画社会基本法に違反するとして9月26日、野村昌弘栗東市長を相手取り、作成費用の損害賠償を求める訴訟を大津地裁に起こしたのだ。

「チラシを見て、ジェンダー(社会的性差)問題に関心がある人は、すぐにおかしいと気づきます。男は社会的、女は家庭的という古い価値観を押しつけている」

 と早川教授は切り込む(以下、発言は同教授)。

 今年6月ごろ偶然、自宅にあった1枚を目にし、「おかしい」。7月、同市に、市長に印刷費用などを弁償することなどを監査請求したが、“問題点を指摘する意見は一切寄せられておらず、社会通念に照らし相当の範囲内のものとする”と棄却され、提訴に踏み切った。

「気がつかないということが問題」

「イラストが問題ですよね。男の子は10人いるのに、女の子は3人しかいない。バランスが悪い」と、まずは視覚的な違和感を指摘する。

「規範意識を高める」という記述のイラストでは子どもに話しかけるのは父親、「子どもが失敗したとき」のイラストの励まし役は母親。そこにも問題が潜んでいるという。

「規範意識を教える社会的な役割は男、慰めて励ますのは女。これは不平等で固定的なジェンダーです」

 女児のイラストに“ぬくもり”“丁寧に”“思いやり”男児のイラストに“元気”という言葉が添えられていることも「おかしい」ポイントで、

「男女両方にとって必要なことです。だから、男女両方のイラストを掲載するべき」

 子どものころから言われがちな「女の子らしくしなさい」「男の子らしくしろ」といった悪意のない教育が、大人になっても修正されなければ見過ごしてしまうチラシの表現。あまりにも自然な点に、

「(チラシを作った)行政に悪意があるとは思っていません。無意識なんです。ただ、気がつかないということが問題なんです。ジェンダーというのは文化ですから、古い価値観の中につかっていると気がつかないものです。だから私自身が問題提起をするしかないと思って、提訴しました」

 と、問題の根深さを語り、さらに主張を加える。

「私はジェンダーをなくせと言っているわけではない。男と女の性別文化は違っていいと思っている。だが、人間に生きづらさを与えたり、選択肢を狭めているのであれば、それはおかしいんじゃないですか、と言っているんです」

「次の世代に何を引き継ぐのか、自覚的になる必要がある」

 一方、訴えられた市側は、

「チラシは、自信を持って出しているので問題ないと思っております」(学校教育課)

 小さな1枚のチラシに潜む、暗黙の文化、慣習。時代の価値観が急激に変化している今だからこそ、

「大人の世代は、何がよく、何が悪いか、次の世代に何を引き継ぐのか、自覚的になる必要があるんです」

 早川教授の「ジェンダーの問題への気づきの一助になれば」という提訴に裁判所はどう判断を下すのか。

最終更新:10/13(木) 18:30

週刊女性PRIME

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