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名優たちの“セカンドライフ” #015「ショーン・ライト・フィリップス」

footballista 10/13(木) 16:37配信

月刊フットボリスタ第38号より

欧州のトップリーグで輝かしい実績を残した名優たちが、新たな挑戦の場として欧州以外の地域へと旅立つケースが増えている。しかし、そのチャレンジの詳しい様子はなかなか伝わってこない。そんな彼らの、新天地での近況にスポットライトを当てる。


#015 from USA
Shaun WRIGHT PHILLIPS
ショーン・ライト・フィリップス
(NYレッドブルズ/元イングランド代表)


12年越しの兄弟共演。ホットラインをもう一度


 きっかけは偶然だった。15年夏、ショーン・ライト・フィリップスは弟ブラッドリーの結婚式に列席するため、アメリカにいた。家族の門出を祝った後、弟が在籍するNYレッドブルズのアウェイ戦を観戦するため空港にいた時のことだった。同クラブのジェシー・マーシ監督とばったり会い、そこで練習参加を打診されたのだ。14-15限りでQPRを放出され無所属だった彼はこれを快諾し、数週間後には弟のチームメイトとして契約を交わしていた。

 ショーンは元イングランド代表FWイアン・ライトの養子で、ブラッドリーは実子だから血の繋がりはない。だが、心の繋がりは普通の兄弟よりも強い。ショーンいわく「競争意識はなく、互いを刺激し合う関係」で、ライバル関係だったのはゲームの中でだけ。ただ、そんな仲の良い2人も、ユース時代から育ったマンチェスター・シティではスターだったショーンに対し、ブラッドリーは鳴かず飛ばず。プレミアの舞台でともにプレーしたのはショーンがチェルシーに引き抜かれる直前の04-05だけで、エース格だった兄に対して、弟は控えに過ぎなかった。


■弟は今やリーグ屈指のストライカー


 だが、父の後押しもあって一念発起したブラッドリーは13年にMLS挑戦へと踏み切り、そこで化けた。14年にレギュラーシーズン27ゴールを挙げてMLSのシーズン最多タイ記録を樹立。いまやクラブの顔だ。遅咲きの弟に対し、早熟の兄はチェルシーから古巣シティに復帰するもビッグクラブ化の波に乗れず。QPRでの最終シーズンとなった14-15はたった1試合しか先発できなかった。そんな彼が、弟が演出した偶然によって新天地でチャンスを得たのだから、人生とはわからないものだ。

 かくしてNYレッドブルズの一員となったショーンは、15年8月1日のフィラデルフィア・ユニオン戦に途中出場してデビューを飾ると、いきなり魅せる。得意のドリブルで左サイドをえぐって記録した初アシストの相手は、エースのブラッドリー。ファンは名コンビの誕生に沸いた。

 だが、サッカーの神様はそう簡単に微笑んではくれなかった。このシーズン、ホットライン開通はこの一度きり。ケガもあり、ショーンはこれ以上の輝きを放つことはなかった。

 2年目の今季も、ハムストリングに慢性的な痛みを抱える34歳は本来の姿を取り戻すことができていない。相変わらずゴールを量産し、8月にはクラブのMLS歴代得点記録を更新した弟の勇姿をスタンドから見守ることが増えている。そんなショーンを見ると、欧州のスターが誰しもアメリカで「第二の春」を謳歌できるとは限らないことが切に感じられる。ランパードやジェラードが年俸600万ドル以上を稼ぐ一方、ショーンのそれは11万ドル程度に過ぎない。

 それでも、シティでともに戦って以来、12年ぶりに兄と同じ車でクラブハウスに通えることを何より喜ぶブラッドリーにとって、ショーンは精神面で欠かせない存在となっている。もちろん、彼自身もまだ諦めていない。来たる今年のMLSカップ(プレーオフ)で、再び弟のゴールをお膳立てすることを。かつてシティの人気者だった弾丸ドリブラーは、愛する弟の隣で“最後のひと花”を咲かせようと燃えている。

(文/寺沢 薫)


<プロフィール>
ショーン・ライト・フィリップス
(NYレッドブルズ/元イングランド代表)
1981.10.25(34歳)
165cm / 64kg MF ENGLAND

1999-05 マンチェスター・シティ
2005-08 チェルシー
2008-11 マンチェスター・シティ
2011-15 QPR
2015-  NYレッドブルズ (USA)

最終更新:10/13(木) 16:43

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