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古代人の謎の足跡400個超、年代と成因が明らかに

ナショナル ジオグラフィック日本版 10/13(木) 7:33配信

状態のよい極めて貴重な遺跡、タンザニア

 アフリカに暮らすマサイが「神の山」と呼ぶ火山から15キロほど離れた地点に、人類の足跡が状態よく大量に残されている。これまで謎とされてきたその年代が、1万9000年前から5000年前のものであることが9月28日付けの学術誌「Palaeogeography, Palaeoclimatology, Palaeoecology」に発表された。

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 400を超える足跡は、テニスコートよりも若干広い程度の範囲に散らばっている。場所はタンザニア、ナトロン湖南岸のエンガレ・セロにある泥地。これほど多くのホモ・サピエンスの足跡が残っている遺跡は、アフリカには他にない。

 なかには、時速8キロ以上という小走りほどの速さで泥の上を複数の人間が駆け抜けたことを示唆する足跡があった。また親指の形がやや変わったものもあり、これはおそらく指に怪我をしていたのではないかと推測される。

 その他、主に女性や子供からなる12人ほどのグループが、一斉に南西の方角に向かって歩いたような足跡も見られる。エンガレ・セロの泥の上には、彼らが一歩踏み出すごとにその足から落ちた泥のしずくの跡までがくっきりと残されている。

「初めて現地を訪れて車から降りたとき、私は涙ぐんでしまいました」と語るのは、調査チームのリーダーを務めた米アパラチアン州立大学の地質学者、シンシア・リウトカス・ピアース氏だ。

「私は人類の起源、つまり我々はどこから来たのか、我々が現在の我々であるのはなぜなのかといった問題に強く惹かれます。足跡の遺跡に私たち人類の歴史を見るのはとても感動的でした」

 エンガレ・セロの他にも、長い年月を越えて残ってきた人類の足跡は存在する。たとえばオーストラリアのウィランドラ湖遺跡には、およそ2万年前に付けられた700個の足跡化石がある。また南アフリカの海岸沿いの2つの遺跡には、12万年前に生きていたホモ・サピエンスの足跡が残っている。

 エンガレ・セロから南西へおよそ100キロの位置にあるタンザニアのラエトリ遺跡には、はるか360万年前の足跡があり、これは人類の祖先であるアウストラロピテクス・アファレンシスのものではないかと考えられている。

 エンガレ・セロの遺跡で特筆すべきは、足跡の数の多さと多様さだ。こうした特徴が、アフリカにいた人類の祖先がどのような暮らしを送っていたのか、その一端を非常に具体的に推測することを可能にしてくれる。

「この遺跡はきわめて複雑です」と、米ニューヨーク市立大学の古人類学者で、今回の調査チームに参加しているウィリアム・ハーコート・スミス氏は言う。「特に多くの足跡が付いている場所が1カ所あり、我々はそこを『ダンスホール』と名付けました。これほどたくさんの足跡が1カ所に固まって残っている例は見たことがありません」

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最終更新:10/13(木) 7:33

ナショナル ジオグラフィック日本版

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