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ホークスを二刀流で圧倒。 大谷翔平が体現する「非常識な常識」

webスポルティーバ 10/13(木) 14:50配信

 十年一昔という言葉がある。

 しかし彼を見ていると、ひと昔は10年ではなく1年だな、もはや”一年一昔”だな、と思わざるを得なくなってくる。何しろ、ちょうど1年前の今ごろ、大谷翔平は自分のボールさえも信じることができなかったのだ。

【写真】大谷選手の161キロのストレートで打ちとられた柳田悠岐選手

 覚えているだろうか――。

 去年の10月10日、札幌ドームで行なわれたクライマックスシリーズ(CS)のファーストステージ第1戦。リーグ3位のマリーンズを相手に先発のマウンドを託された大谷は、3回途中までに5点を失い、わずか8つのアウトを取っただけで、まさかのノックアウトを喰らった。立ち上がりから変化球でカウントを取ることができず、他に頼るボールがなくなって投げ込んだストレートをことごとく狙い打たれる。あの試合、大谷がマリーンズに打たれた6本のヒットは、すべてストレートを弾き返されたものだった。大谷は試合後、こんなふうに言っていた。

「これで行ける、というイメージを持てませんでした。自分自身、信じ切れずに投げ込むボールがすごく多かった。ホントに申し訳ないマウンドだったと思います」

 そしてその2日後、リーグ2位のファイターズはファーストステージを勝ち抜くことができず、同時に大谷のプロ3年目のシーズンも終わってしまった。バッターの大谷はこの試合、1点ビハインドの8回裏、ワンアウト1、3塁のチャンスに代打で登場する。外野フライでも同点という場面で、大谷はマリーンズの内竜也が投じたワンバウンドの縦スラを2度も空振りして、三振――去年、彼はこの打席をこう振り返っていた。

「今年は低めのああいう変化球の見送りができてなかったんですけど、最終戦でもそこが出てしまいました」

 これが1年前のことだ。

 去年のいま頃の大谷は、ピッチャーとしての実力が際立ち、バッターとしての大谷の存在感が薄くなって、『二刀流は失敗じゃないか』とまで言われていた。そのピッチャーにしても、最多勝と最優秀防御率のタイトルを獲得しながら、ここ一番では勝ち切れないピッチャーだと言われた。高校最後の夏は岩手大会の決勝で敗れて甲子園出場を果たせなかった。去年は優勝したホークスだけに分が悪く、CSではマリーンズに打たれて、日本一の頂からの景色を確かめることはできなかった。大舞台で勝てない……それが1年前の大谷を包む空気だった。

 ところが、である。

 わずか1年で、大谷はそんなトラウマを払拭し、大事な試合でことごとく結果を残してきた。昨秋、プレミア12の韓国戦で2度までも圧巻のピッチングを見せたことを入り口に、今シーズンも優勝の行方を左右する天王山のホークス戦でチームを勝利に導く気迫あふれるピッチングを見せ、リーグ優勝を決めたライオンズ戦では完封劇を演じ、胴上げ投手を務めた。

 バッターとしても覚醒し、ピッチャーとして先発する試合でも打順の中に入ることが珍しくなくなった。オールスターではホームラン競争で優勝し、シーズンを通して22本のホームランを放った。もはや1年前の空気を思い出すのは容易なことではない。この1年で、大谷のバージョンアップは凄まじい速度で繰り返された。

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最終更新:10/13(木) 19:17

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