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日本企業の「残業好き」が崩壊する意外な理由

東洋経済オンライン 10/13(木) 9:00配信

日本企業の主戦力とされてきた男性正社員が、「介護離職」で職場を離れざるをえなくなったとき、日本企業、ひいては日本社会が大きく変わりうると、大阪大学・安田洋祐准教授は説く。長寿社会への適応は、日本経済に何をもたらすのか。
ベストセラー『ワーク・シフト』の著者らが書いた『The 100-YEAR LIFE』の日本語版『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』が10月21日に発売される。誰もが100年生きうる時代の働き方、学び方、結婚、子育て、人生のすべてを描いた本書の内容に関連づけながら、安田准教授に新しい日本の働き方、生き方のビジョンを聞いた。

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■介護離職が日本を変えるチャンス

 ――この本の特徴を、どうご覧になっていますか? 

 簡潔にまとめると、長寿化によって働く期間は長くなっていく。一方でテクノロジーの進展、たとえばAIの進化や新しい機械の登場で、職業選択の幅が広がる。労働市場の状況も早く変わっていく。そうしたなかで、個人レベルでどう対応するか、個人で何ができるかを描いた本ですね。

 ――私たち一人ひとりが、これからどう人生を描くかのヒントがある、ということですね。

 そうですね。がっちりしたマクロ経済の話というよりは、ミクロレベルでキャリア形成に資する内容です。教育・労働・引退という画一的な3ステージモデルが終わって、人生がマルチ・ステージ化する。労働の後に学びの期間があったり、複数の仕事を同時に持ったりと、人生のシナリオが多様化する。そういうなかで、どう生きていくかを考える指針として非常に参考になると思います。ただ、企業の側からの関心もあると思います。

 日本で、従来の働き方が大きく変わるきっかけになりうるものに、介護離職の問題があります。

「介護離職」問題は働き方に大変革をもたらす

 ――介護離職ですか? 

 そうです。企業の主戦力とされてきた男性正社員が、親の介護のために、長時間労働ができなくなっていく。場合によっては、会社を辞めざるをえない。そういう状況が間近に迫っています。そうなったときに、企業はどんな手を打つか。対応を迫られます。

 この層の働き方が変わるようになれば、日本企業、ひいては日本経済全体が大きく変わる一大転機となるでしょう。これは、見方によっては大きなチャンスとも言えます。

■残業を減らすインセンティブ設計

 ――社員のワークとライフのバランスを考える必要があると。

 ワーク・ライフ・バランスは、これまでは主に女性活用という視点からの議論が中心でした。それに対応した制度は、企業の側でも実はかなり整備してきていると思います。ところが、多くの職場において実態はまだあまり変わっていない。

 子育て支援などは、ベンチャー企業のほうが進んでいる面もあります。組織が若いのでフットワークが軽いし、経営者自身も若く、自ら子育てを経験中というステージの人も多い。だからそういう制度に理解があるし、トップの理解があることを社員もわかっている。

 ですので、いざトップが子育て支援を制度として導入すると、社員がきちんとその意図をくみ取って制度を活用しやすい。「組織が変わる」という空気が生まれやすいのですね。

 一方で大企業はどうか。少しステレオタイプかもしれませんが、大企業の経営陣は人生を仕事に捧げてきた人、特に男性のシニア層がほとんどではないでしょうか。長時間労働を当然、あるいは必要悪と思っているところがある。

 こうして長時間労働が前提になっていると、子育て支援などの制度は導入されにくい。あるいは、制度自体はあったとしてもほとんど活用されない。こういった問題が起こりやすいのです。

 なぜかと言うと、みんなが長時間労働をしているときに、自分だけ早く帰り続けていると昇進しにくくなる、あるいは職場の居心地が悪くなってしまう。つまり、せっかく制度が導入されても、自分だけがその制度を活用すると割りを食ってしまう、ということをみんなわかっている。そういう空気があると、制度は形骸化してしまうのです。

 ――なるほど。では、どうすればいいのでしょうか。

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最終更新:10/13(木) 10:30

東洋経済オンライン

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