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「IoT」でビッグデータとAIは絶対に必要か

東洋経済オンライン 10/13(木) 6:00配信

「IoT」を導入しても、儲からなかったら意味がない。だが今ほとんどの企業がやっているのは「戦略なきIoT」だ。「使えるIoT」を提供するエスキュービズムの武下真典氏が、3回にわたって「企業がやってはいけないIoT」を具体例を交えてわかりやすく語る。第2回は「IoTとビッグデータ、AI(人工知能)との関係」について。 第1回「IoT」の絶対にやってはいけない"落とし穴"

 今回は、モノのインターネット、IoT(Internet of things)とは「ビッグデータや人工知能を、やみくもに使うことではない」、というお話です。現場でIoTの話をするとわかるのですが、企業の責任者や担当者の中には「IoTを本格的に実行するのだから、この際ビッグデータの解析や、人工知能の導入をしないと意味がない!!」と考えている方がけっこういます。読者の皆さんは、これらの考え方をどう思われますか? 

■「データさえ集めればビジネスが変わる」という幻想

 確かに、センサーのコストが飛躍的に下がってきたので、集められるデータの種類は膨大になってきました。また、人工知能にしても、自動運転を可能にしたり、囲碁で人間に勝ったりするほどの急速な進歩を遂げています。

 しかし、闇雲にデータをかき集めたからといって、それがビジネスに変革をもたらしてくれるかどうかは、また別の話です。

 私の会社では、飲食店や小売店に「タブレット型のPOS(販売時点管理)レジ」を提供するサービスを手掛けています。導入店舗は5000店ほどで、そこからは日々大量のデータが送られてきます。

 そういう事情を知っている人からはよく「大量のデータが集まってきたら、それを解析して、ソリューションとして売ったり課題解決のコンサルティングをしたりするんですか?」と聞かれたりします。

 私は「そのつもりはありません」と答えています。

なぜビッグデータをむやみに集めても無意味なのか?

 実はこれまでPOSレジのデータを分析してみたことは何度もあるのです。飲食店のビッグデータを分析して分かったことは、ひとことで例えれば「焼酎の“鏡月”を頼んだ客よりも、“ふんわり鏡月”を頼んだ客のほうが、客単価が高い」ということでした。

 つまり、スタンダードな焼酎よりも、プレミア感がある焼酎を頼んだ客のほうがたくさん飲み食いしてくれた、ということですが、それを飲食店に伝えても「何を当たり前のことを!」と言われるのは目に見えています。

 実際にこんな経験もしました。POSレジには「経度緯度計のセンサー」も入っているので、その店がある場所の、天気や気温が分かります。そこで飲食店に、「どんな天気でどんな気温だった時にどういう注文が増えるかが分かりますよ」と売り込んだのですが、「そんなことはだいたいわかっている」と、あまり興味を示してもらえませんでした。

■「仮説」を検証するには「スモールデータ」で十分 

 つまり何が言いたいのかというと、ビッグデータを分析して出てくる答えは、すでにビジネスの現場にいる人たちが経験則として知っているものであることが少なくないのです。

 IoTをビジネスに取り入れようとしている人は、「大量のデータを集めなければ」とか「データは多ければ多いほどいい」と思い込んでいる人が多いように感じます。

 もちろん、天気や気温、湿度、曜日や時間帯といったデータと、飲食店でのお客さんの注文データとをクロスさせて分析したら、誰も気づいていない大発見があるかもしれません。また、データサイエンティストなどの分析のプロがしっかりと分析することで、価値のある結論にたどり着きやすくなるでしょう。そういうアプローチの仕方もあると思いますが、IoTが活躍するのは、そういう分野だけではないと思うのです。

 同じように飲食店を例にとるなら、「コース料理にこのメニューを組み込むと、女性客の予約が増えるんじゃないか?」と、お店側で“なんとなく感じている仮説”のようなものがあると思います。

 だったら、少しの期間だけコース料理のメニューを組み替えてみて、その間の予約状況や注文状況を分析してみる。このように、“なんとなく感じている仮説“を検証するほうが、業務の現場では価値が高いことがあります。そしてそれを可能にするのは、実はビッグデータではなく、スモールデータで十分なのです。

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最終更新:10/13(木) 9:05

東洋経済オンライン

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