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配偶者控除の見直し議論 「103万円の壁」崩壊で働き女子への影響は

NIKKEI STYLE 10/14(金) 7:47配信

 女性が働く上で、2つの重要な“収入の壁”があります。「年収103万円の壁」と「年収130万円の壁」です。皆さんも聞いたことがあるでしょう。
 「年収103万円の壁」とは、年収(給与)が103万円までなら所得税を負担しなくて済む、というもの。この年収で働く方の多くはパート・アルバイトで、社会保険の加入要件を満たさないため、働いた給料のほぼ全額が手取りとしてもらえます。
 さらに、夫がいる場合は「配偶者控除」の対象となります。これは、夫の所得から38万円を差し引けるという制度。夫は課税対象となる所得が減るので、支払う所得税も安くなります。
 今、この「配偶者控除」を廃止するかどうか、という議論が続いています。
 もともと配偶者控除とは、「夫が収入ゼロの専業主婦を扶養する」ことを前提に、1961年に作られた制度。しかし現在は、専業主婦世帯が687万世帯まで減ったのに対し、共働き世帯は1114万世帯に(男女共同参画白書平成28年版より)。97年以降、共働き世帯のほうが多くなっており、時代に合わないという指摘が出続けてきました。
 また、配偶者控除を受けるために、妻が年収をあえて103万円以内に抑えようとするケースも。制度を廃止することで、女性の社会進出を促進したいという国の意図もあるのです。
 見直しの案の一つが、配偶者控除を廃止し、代わりに、妻の年収に関係なく夫婦で使える「夫婦控除」を創設するというもの。この案が実現すれば、妻の年収が103万円を超える共働き世帯(高所得世帯は除く)も、税金が安くなる可能性があり、不公平感は和らぎそう。今後の議論の行方に注目です。

■年収を抑えるより、働いて社会保険に加入を

 さて、もう一つの「年収130万円の壁」とは何でしょう。
 これまで、会社員や公務員の妻は、年収が130万円未満なら自分で社会保険料(健康保険料や厚生年金保険料)を納める必要がありませんでした。社会保険に加入するには、年収130万円以上で、同じ会社の正社員の労働日数・時間と比べて4分の3以上働いている必要があったのです。
 しかしこれも、16年10月から制度が変わりました。
 社員数が501人以上の会社に1年以上勤務する見込みがあるパートタイマーの場合、週に20時間以上働いており、年収106万円以上なら、健康保険と厚生年金保険に加入しなければならなくなりました。
 どんな影響があるのでしょう。ズバリ、手取りが減ります。健康保険と厚生年金保険に加入すると、健康保険で5%程度、厚生年金保険で9%程度の保険料が、給与から差し引かれることになります。
 年収106万円で働くパートの手取り額を比較してみましょう。
 16年10月以前は、約105万円が手取りとしてもらえました。ところが10月以降は、手取りが約90万円まで減る計算です。手取り約105万円を得ようとすると、年収を約120万円まで上げる必要があります。
 手取りが減るのは痛いですね。けれど、健康保険や厚生年金保険は、加入するメリットも大きいのです。
 例えば健康保険からは、病気で3日以上連続して働けなくなった場合に、4日目から傷病手当金として、休む前の給与の3分の2が1年6カ月間支給されます。また、厚生年金保険に加入することで、老後は老齢基礎年金と老齢厚生年金の2種類を受給できます。年収を減らすより、もっと多く働いて、社会保険制度を徹底活用することを考えたほうがいいでしょう。
 「年収103万円の壁」や「年収130万円の壁」が崩れつつあるのは、女性の職場進出や、子育て後の復帰を税制から促進しようという表れ。この波に乗って、長く働けるようなスキルを身に付けることが大切です。

今月の回答者

社会保険労務士・FP北村庄吾さん 1991年に国家資格者の総合事務所「BraiN」を設立。著書に『給与明細で騙されるな』(朝日新書)、『やさしくわかる給与計算と社会保険事務のしごと』(日本実業出版社)など。給与計算実務能力検定1~3級の試験を、全国主要都市で実施しています。http://jitsumu-up.jp/

[日経ウーマン 2016年11月号の記事を再構成]

最終更新:10/14(金) 7:47

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