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技術力の低下でついに資産売却 三菱重工の失墜

週刊文春 10/14(金) 7:01配信

 戦前から日本の製造業を牽引してきた名門・三菱重工業が苦境に喘いでいる。不動産部門の一部などの資産と有価証券の売却で、18年3月期までに、2000億円のキャッシュを確保する方針だ。

“モノ作り力”の低下は目を覆うばかりだ。祖業である造船事業の主力拠点・長崎造船所は11年、豪華客船2隻を1000億円で受注した。しかし、基本設計に手間取った上、度重なる仕様変更で、計約2400億円の特別損失の計上を余儀なくされている。さらに今年1月には、完成直前の船内で3回連続の不審火が発生、管理能力も問われた。

「コスト削減などのため、客船建造の現場に外国人労働者を入れているが、言葉も通じず、まともな安全管理の指導ができていない」(社員)

 13年には、世界初の素材を使ったコンテナ船が、インド洋を航行中に2つに割れて沈没する事故が起きた。就航からわずか5年での事故だ。

 得意の軍需部門でも苦戦が続く。現在6隻が配備されているイージス艦は5隻が重工製。しかし7隻目となる新型イージス艦の入札が昨秋に実施され、三菱重工が本命視されていたが、競り負けた。今夏の8隻目の入札でも敗北し、「以前なら意地でも受注してきたはず。経営悪化で価格を下げられないのでは」(造船業界関係者)と見られている。

 社運を賭けて取り組む三菱リージョナルジェット(MRJ)も業績の足を引っ張る。主翼の強度不足が露呈するなど開発が遅れ、5度目の納入延期が確実な情勢だ。20年度に黒字化を目論(もくろ)むが、これも怪しい雲行きだ。

「開発投資は年間の営業利益額に匹敵する約3000億円。かなりキャッシュフローを圧迫しているはず」(業界関係者)

 重工は造船事業を縮小、豪華客船の受注を止める方針だ。開発設計部門の分社化も検討している。

 だが、さらなるリスクも潜んでいる。重工が米国の原子力発電所に納入した蒸気発生器が壊れて廃炉になったとして、日本円で約7000億円の賠償を求められているのだ。裁判の結果が出るのは早くて16年末。結果次第では株価にも大きく影響しそうだ。

 三菱自動車に続く重工の失墜は、「三菱は国家なり」を自負する三菱グループにとっても大きな傷になりかねない。


<週刊文春2016年10月20日号『THIS WEEK 経済』より>

井上 久男(ジャーナリスト)

最終更新:10/14(金) 7:06

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