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「シン・ゴジラ」を見たら読みたい3冊

Book Bang 10/14(金) 8:00配信

 映画「シン・ゴジラ」、三・一一以後のリアルが云々とか自衛隊のリアルが云々とか言われているけれど、特撮&日本映画ファンとしては岡本喜八や実相寺昭雄といったクリエイターたちへのオマージュが満載であるだけでも嬉しい限り。

 その熱に当てられて岡本喜八の対談集『しどろもどろ』(ちくま文庫)や、実相寺昭雄のエッセイ『ウルトラマン誕生』(同)を読み漁り、さてお次は何を読もうかと思ったところで文庫化されたのが俳優、岸田森の軌跡をたどった小幡貴一・田辺友貴編『不死蝶 岸田森』であった。単行本発売より一六年もの時を経ての文庫化だが、「シン・ゴジラ」がヒットする今ほど絶妙なタイミングはなかっただろう。岸田こそは「怪奇大作戦」「帰ってきたウルトラマン」などの番組で特撮ファンを唸らせた世紀の怪優であり、岡本作品や実相寺作品の常連俳優として日本映画に足跡を残した男なのだから。

 貴重なインタビューと本人によるエッセイ、岸田と縁の深い人物による回想録などを収めた本書は、“奇怪な役者”と呼ばれた岸田のナイーブな素顔、そしてロマンチストで夢想家な面を浮き彫りにしてみせる。 

 取り分け印象深いのは蝶の収集家としての岸田の姿だ。「私がもしユートピアを作るとしたら、チョウが群舞している世界をただちに想い浮かべる」と言うくらい蝶に魅せられていた岸田は、映画の撮影を中断し蝶を捕獲し始めたエピソードを嬉々として語り、収録されているエッセイも全て蝶がらみ。徹底して自分の世界にのめり込む姿勢はまさにオタクである。時代を超えて特撮ファンが岸田の演技に熱狂するのは、彼の内にあるオタクの気質と知らず知らずのうちに共鳴しているからではないか。

 一九八二年、大酒飲みであった岸田は癌により四三歳の若さでこの世を去る。本書では早すぎる死を嘆き、不器用な彼を救えなかった事を後悔する者の声が聞こえ、それが実に悲しい。しかし岸田の遺した魂は「シン・ゴジラ」をはじめとする作品に受け継がれている。不死蝶は今も日本映画界に舞っているのだ。

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最終更新:10/14(金) 8:00

Book Bang

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