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オバマがアジアでやり残していること

Wedge 10/14(金) 12:12配信

 オバマ大統領のG20やASEAN関連会議出席のアジア歴訪に際し、9月7日付のニューヨーク・タイムズ紙の社説は、オバマ政権のアジア政策を包括的に評価しています。要旨は次の通りです。

最後の努力

 今回のアジア訪問はオバマのアジアへの関与を強める最後の努力となったが、TPPや北朝鮮の核開発など未だ残されている重要な課題がある。しかし、米国が安定化のための存在としてこの地域に留まり、中国の増大する力とその強まる自己主張に対峙する重しの役目を果たすつもりであることについて、オバマはアジア諸国を安心させることでは前進した。

 ラオスとの関係が新たな段階に進んだことに加え、ミャンマーとの関係も築かれた。ベトナムとの関係は拡大され、武器禁輸は解除された。米軍による使用のための基地に関する新たな協定がフィリピンと豪州との間で成立した。オバマはインドとの協力関係を新たな段階に高めた。過去10年交渉されてきた両国の軍の間の物品役務の相互支援に係る合意が先月成立したことがそれである。米国はこの地域の諸国との共同軍事演習を大幅に拡大し、また韓国に対するミサイルシステムの供与をはじめ武器の売却を拡大した。

 これら諸国を米国との関係強化に駆り立てたものは、中国の増大する軍事能力とその南シナ海に対する図々しい権利主張――埋め立てて飛行場と軍事施設を建設した――である。就任当初、オバマは中国と世界的な問題について協力することを希望したが、中国の侵略的な姿勢と米国経済にとってのアジアの重要性の故に、オバマ政権は、2011年までには、他のアジア諸国との関係を強化する計画を表明することとなった。南シナ海の緊張の高まりには自制的な役割を演じたが、航行の自由というコミットメントを守るため戦略的な水域に軍艦を派遣した。中国およびフィリピン、ベトナムをはじめ他の領有権を主張する諸国には平和的解決を働き掛けたが、中国による深刻な挑発は続いている。他方、双方の利害が一致する場合には中国と米国は重要な貢献をした。イランとの核合意および気候変動に関するパリ協定の批准がそれである。

 中国の南シナ海における侵略的な行動は、この地域の将来にとって益々大きな問題となるだろうし、オバマの後任の大統領に複雑な挑戦を提起することとなろう。また、オバマが北朝鮮の脅威を除去し得る見通しはない。中国は効果を持ち得るような圧力を北朝鮮に加えることを拒否している。

 オバマおよびアジアの首脳にとってTPPはオバマのアジア政策の中心的要素である。両党の大統領候補や多くの議員が反対しているが、当局者はTPPを承認するよう議会を説得出来ると考えている。

出 典:New York Times ‘Obama Leaves Unfinished Business in Asia’(September 7, 2016)

 上記は、オバマのアジア回帰政策を評価したものです。この政策は2011年にクリントン国務長官が論文発表したもので、イラクとアフガニスタンの二つの戦争を終えるに伴い、新たな現実に適合するよう外交の焦点をアジアに移行するとしたものです。この政策は一方で、米国がこの地域に安定のための力としてとどまることを明確にし、同盟と連帯の関係を強化します。他方、中国がこの地域で覇権を追求することを阻止しようというものです。

 前者については、社説が指摘するように成果をあげたと評価出来ます。ベトナムやフィリピンとの安全保障関係の新たな展開もそうです。特にインドとの関係の強化は注目に値します。インドの従来からの非同盟志向の姿勢に変化が見られるようです。これら諸国の動きの背景に中国の無遠慮な行動があることは疑いありません。米国の政策が、これら諸国の安全保障に対する関心を高め、それなりの措置をとるよう促し、全体として中国の動向に対する抵抗力を増す方向に作用しているように観察されます。この努力は次期政権にも引き継がれるべきものです。社説が言及し忘れていることは、米国がこの地域にとどまるについて、日米安保条約が枢要な役割を果たしていることであり、このことは明確に認識される必要があります。また、日本もこれら諸国の抵抗力を強めるための施策を引き続き進めて行くことが重要です。

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最終更新:10/14(金) 12:12

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