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「水鏡推理」シリーズ最新刊! 文科省一般職の超美人ヒラ職員、1分1秒を争う気象ミステリーに挑む!

ダ・ヴィンチニュース 10/14(金) 11:00配信

 自分の考えていることは何ひとつ言わないが、親には、自分が望むような言葉をかけてほしい。何も言わなくても両親に理解されたいと思うことは、いけないことなのだろうか。理解されないと、あまりにも苦しい。思わず、カッとなって反発してしまう。松岡圭祐の『水鏡推理IV アノマリー』(講談社)は、ある不可解な遭難事故を通じて、あらゆる親子の複雑な関係を描き出していく。

 松岡圭祐氏といえば、これまでも、「千里眼」シリーズや「万能鑑定士」シリーズ、「探偵の探偵」シリーズなどの大人気シリーズを生み出してきた。最新シリーズ「水鏡推理」シリーズも、また多くの人の注目を集めている。STAP細胞やマンション杭い打ちデータ捏造など、豊富な時事ネタを絡めた内容は、現実の問題を反映しているとして大きな話題を呼んでいるのだ。

 主人公の水鏡瑞希は、文科省に実在する、不正研究を暴くタスクフォースに所属する超美人の一般職の事務官。公務員試験の「判断・推理」の問題の対策のために、大学生の頃、探偵事務所でバイトした経験がある彼女は類まれなる推理力と洞察力で、不正の匂いを嗅ぎ付ける。『水鏡推理 アノマリー』は「水鏡」シリーズの4作目にあたるが、この巻から読み始めても、あなたは彼女の虜となることだろう。タイトルになっている「アノマリー」とは、法則や理論と比較して説明不可能な事象のこと。物理学から経済学まで様々な局面で出現するが、瑞希は、ある事件を通じて、気象学における「アノマリー」を知ることとなる。

 舞台は、青森県の八甲田山。気象庁と民間気象会社の予報の食い違いから、登山中の少女たちが集団遭難するという前代未聞の悲劇が起きた。しかも、遭難したのは、全員女子少年院に収容されている少女たち。厚労省と文科省の協力のもと、とあるNPO法人が企画した、非行少女たちの立ち直り支援の参加者だった。彼女たちは、女子少年院の閉ざされた世界を解放し、社会との関わりのなかで自立を模索するための試みとして、今までも少女たちだけであらゆる山に登ってきた。その動向がSNS上にアップされ、活動への注目度が高まる一方で、世間からは遭難を心配する管理体制の甘さを非難する声が集まっていた。そんななか、瑞希は天候が急変した山中の映像に、同僚のキャリア官僚・浅村の姿が映り込んでいることに気づく。おまけに、浅村は、瑞希に天気図とみられる謎の書類を預けていた。この事故の裏には、新進の民間気象会社の驚異的な予報的中率のからくりが――。人命さえ軽んじる霞が関の巨悪に、文科省ヒラ職員が立ち向かう。

 瑞希は真実にたどり着くためには、上司にあたるキャリア官僚にも歯に衣着せぬ物言いも辞さない。そのため、問題児として扱われることもあるし、一般職であるという理由で、キャリア官僚からの差別もある。本作で、瑞希はこの仕事に向いていないのではないかと悩む。だが、浅村はキャリア官僚でありながら、瑞希に分け隔てなく接してくれた。そんな彼が突然姿を眩まし、しかも、少女たちと遭難しているというのだから、瑞希は放っておけるわけがない。浅村はなぜ少女たちに同行したのだろうか。瑞希は浅村と少女たちを助けることができるのだろうか。

 非行少女たちをめぐる生活環境が明らかになるにつれて、胸が苦しくなる。少女たちの家族は、娘が遭難に対して、不可解な態度を取り続ける。本当に彼らは、心の底から心配したり、悲しんだりしているのだろうか。非行ばかりを重ねてきた少女たちを厄介に思っていたのではないか。そう感じた瑞希は、やるせなさを覚える。

 瑞希自身、阪神淡路大震災で被災し、仮設住宅暮らしを経験したこともあり、家族の大切さを理解はしている。だが、両親に対していつでも素直に接することができるとは限らない。瑞希の今の状況を知らずに思い出話を始めようとする両親に対して、苛立ちを抑えられなくなることもある。抱えている気持ちを理解してほしいのに、理解されない苦しみに囚われてしまっている。

 この事件は、親子関係の問題のみならず、若者とSNSの問題から東京オリンピックの問題まで、現代におけるさまざまな問題を描き出しているリアリティあふれた小説だ。悩みながらも、強く突き進んでいく瑞希の姿がなんと美しいことか…官僚支配の霞ケ関で正義を貫く瑞希の姿は必見! ぜひともあなたもニューヒロインの活躍する、1分1秒を争うタイムリミットサスペンスを見逃すことなかれ!

文=アサトーミナミ

最終更新:10/14(金) 11:00

ダ・ヴィンチニュース

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