ここから本文です

混乱と迷走の“イン・ユア・ハウス5”――フミ斎藤のプロレス講座別冊WWEヒストリー第201回(1995年)

週刊SPA! 10/14(金) 9:10配信

 WWEの“マンデーナイト・ロウMonday Night Raw”とWCWの“マンデー・ナイトロMonday Nitro”が毎週、同時刻に別べつのチャンネルで裏番組をぶつけ合う“月曜TVウォーズ”は、そのプロローグから4カ月めを迎えていた。

 WCWの“ナイトロ”は、新番組の放映開始から2週めの9月11日オンエア分で2.5パーセントの視聴率をスコア。同日オンエア分の“ロウ”(2.2パーセント)を0.3パーセントの僅差で破った。

 WWEの“ロウ”はそれまで毎週、平均3.2パーセントほどの視聴率をあげていたが、“ナイトロ”がスタートした9月第1週からはこの数字が平均2.5パーセントに下落した。

 WWEにとってはWCWの新番組に視聴者の一部を奪われた形ではあるが、ふたつの番組の視聴率の合計がつねに5パーセント台をキープしているというデータは、毎週月曜夜のプライムタイムにアメリカ国内の500万世帯を超える一般家庭がいずれかのプロレス番組にチャンネルを合わせているという現実を表していた。

 ひじょうにまぎらわしい名称のふたつのテレビ番組の同時進行が一般視聴者レベルでのプロレスへの関心度を高めたことはどうやら事実だった。

 WWEとWCWのスタンスのちがいがすでに明らかだった。WWEにとって“ロウ”は起承転結のなかの起承転までのドラマ展開で、“結”にあたるクライマックスの部分はPPV(契約式有料放映)にレイアウトされていた。だから、通常のテレビ番組の視聴率は単なる数値でしかなかった。

 ところが、全米生中継をセールスポイントとするWCWの“ナイトロ”はすべてのドラマが番組内ではじまり番組内で終わるというデザインになっていて、毎週月曜夜に何パーセントの視聴率をはじき出すかの一点だけが番組の存在理由になっていた。WWEにとってWCWのこのスタンスはやっかいだった。

 WWEは9月から12月までの4カ月間に9.24“イン・ユア・ハウス3”ミシガン州サギノー、10.22“イン・ユア・ハウス4”カナダ・マニトバ州ウィニペグ、11.19“サバイバー・シリーズ”メアリーランド州ランドーバー、12.17“イン・ユア・ハウス5”ペンシルベニア州ハーシーのPPV4大会をプロデュースした。

 1995年の最後のPPVとなった12.17“イン・ユア・ハウス5”ハーシー大会は、“ヒットマン”ブレット・ハート対ブリティッシュ・ブルドッグ(デイビーボーイ・スミス)のWWE世界ヘビー級選手権をメインイベントに全6試合がラインナップされた。

 ブレット対ブルドッグのタイトルマッチは、3年まえの“サマースラム92”ウェンブリー・スタジアム大会のリメイク版。今回はブルドッグがヒールで、ブレットの妹でブルドッグの妻であるダイアナ・ハートが夫のセコンドにつき、兄ブレットの敵にまわるというややこしいサイドストーリーが用意されたが、観客の反応はなぜかいまひとつだった。

 試合は21分9秒、後方回転エビ固めとそのリバース式エビ固めの攻防から、ブレットが新技ラ・マヒストラルでブルドッグから3カウントを奪い王座防衛に成功。試合終了後、ブルドッグ&ダイアナはおたがいを支え合うようにしてリングを降り、ベビーフェース再転向のメッセージを観客に向かってディスプレーした。

 セミファイナルのアンダーテイカー対メイベルの“棺おけマッチ”は6分11秒、アンダーテイカーが順当に超巨漢のメイベルを“埋葬”。

 第4試合のディーゼル(ケビン・ナッシュ)対オーエン・ハートのシングルマッチは、わずか4分34秒のファイトタイムでディーゼルがレフェリーへの暴行で反則負け。ベビーフェースでもヒールでもないオトナ向けの独自路線を歩むディーゼルのキャラクター設定がどことなく“勇み足”的な印象を与えた。

 この日、ハーシーパーク・アリーナは約7200人の観衆を動員したが、1階アリーナ席の観客の多くはテレビの画面に映ることを意識したさまざまな手書きのサインボード、プラカード類を持参していた。これもまた“月曜TVウォーズ”の副産物のひとつだった。翌日、WCWの“ナイトロ”生中継でまたしても事件が起きた。(つづく)

※この連載は月~金で毎日更新されます

文/斎藤文彦 イラスト/おはつ

※斎藤文彦さんへの質問メールは、こちら(https://nikkan-spa.jp/inquiry)に! 件名に「フミ斎藤のプロレス講座」と書いたうえで、お送りください。

日刊SPA!

最終更新:10/14(金) 9:10

週刊SPA!

記事提供社からのご案内(外部サイト)

週刊SPA!

扶桑社

2016年12月13日号
12月06日発売

¥390

・[転売で儲ける](秘)メソッド
・[ゲス不倫ブーム]知られざる波紋
・[痛すぎる発言]ランキング
・冬のボーナス[有名企業50社]対決