ここから本文です

温泉のひみつ~外国人観光客の“温泉事情”

本の話WEB 10/15(土) 12:00配信

 リオ五輪が終わり、二〇二〇年の東京五輪が近づいてきました。一九年にはラグビーW杯が大分市や釜石市など、日本各地で開催されます。“外国人が魅力的と感じる日本”といったテーマのテレビ番組も増えてきました。外国人観光客にとって、日本が誇る“温泉”はどのようにうつっているのでしょうか。

 やはり、文化風習、宗教も異なる外国人にとって、他人と裸で入浴することは抵抗があるようです。それでもひとたび湯船に入り寛げば、温泉ファンになる外国人をたくさん見てきました。

 長野県野沢温泉の共同浴場「大湯」で四十五度以上もの高温の湯に身体を沈め、白い肌を真っ赤にし、「う~」と吐息を漏らしながら入浴していた若い女性は豪州からの観光客。「熱い湯に日本人のソウルを感じる」と語っていました。

 また、日本ミシュランタイヤでアジア地域を統括するフランス人デルマスさんは、温泉好きが高じて神奈川県の湯河原温泉に温泉付きの別荘を購入したとか。デルマスさんはこう言います。

「温泉の気持ちよさを知れば、外国人は必ずファンになる。けれど多くの人は温泉の心地よさを知らない。温泉旅館の使い方も、まだ理解されていないのです」

 デルマスさんの依頼で、フランス人に日本の旅を案内する「ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン」に、温泉について解説を書くことになりました。

 最初に伝えたかったのは、温泉の入り方。今年、温泉地の皆さんとともに入浴マナーを記した手ぬぐいを作りました。服を脱いで、身体を洗い、風呂に入り、湯船から上がったら身体を拭いて、浴場から出て、一休み、という一連の流れを、海外でも人気の漫画家さんに九コマの漫画で説明してもらったものです。わかりやすいと、訪日外国人のお土産として大人気。このような趣向をこらした伝え方で、外国人観光客に楽しみながら温泉を知ってもらいたいものです。

 現在、どのくらい外国人が、温泉に来ているのでしょうか。二〇一五年度に、外国人観光客数が前年度比約四十五パーセント増となり、二千万人を突破したことが話題になりました。箱根湯本温泉や飛騨高山温泉郷、九州の別府などでは外国人を見かけますが、彼らは街を散策するだけにとどまり、“温泉旅館”に宿泊する人はさほど多くありません。九州などでは近くに停泊した大型客船に泊まったり、大型ホテルに泊まる人がほとんどだといいます。

 以前、宿泊客のうち欧米人の割合が六割を超えるという旅館に泊まった経験があります。この時はチェックインから驚きの連続でした。強烈な香水や体臭が鼻をつき、フロントの印象は、まるで欧米の空港にでも到着したかのようでした。伝統的な温泉宿ならば、ほのかで品のある香りが漂うはずが、この時は強烈な匂いにずっと違和感を抱いたままでした。その宿ではスタッフ全てが流暢な英語を話し、広東語、韓国語、フランス語を話せるスタッフも。さらには、料理長自らが、和食を英語で説明していました。「八寸」の説明を意味を英語で聞いて、感心しましたが、宿の雰囲気は“異空間”そのものでした。

 中国人観光客向けに、中国人が大型旅館を買収するというケースも増えています。日本の伝統的な温泉旅館を、外国人に楽しんでもらうことはやはり難しいのでしょうか。

 バランスをうまく取っている旅館が、群馬県四万温泉にあります。「柏屋旅館」は全十五室という規模の宿。宿泊者は日本人が多いですが、米国、豪州、シンガポール、香港などからの外国人旅行者が、全体の七パーセントを占めるそうです。

 四万温泉という田舎の小さな温泉地の旅館に外国人が来るようになったきっかけは、二〇一四年十二月のホームページのリニューアルでした。「貸切露天風呂が三か所、露天風呂付き客室も二か所あり、タトゥーがあるお客様も入浴ができる」「東京駅からバスで直行便があるから迷わない」など、外国人観光客にとって必要かつ、わかりやすい情報を公開。それをSNSなども使って、世界に広く伝えているのです。

 また、チェックインの際に、外国人観光客に、食事の時間や風呂の案内を記したパンフレットを配ることで、宿の使い方が理解され、従業員らも、日常会話程度の英会話で、お客様を受け入れることができるようです。柏屋旅館の主人は、「最も大切なことは、スタッフたちに英語ができなくても大丈夫! という意識を植え付けること。自信をもって対応させること」と話していました。

 実際、トラブルもないようで、小さな旅館にできる“理想的なもてなし”と言えるのではないでしょうか。訪日外国人が増えるという好機を活かして、温泉地や旅館も変化していく時期がきているのかもしれません。

文:山崎 まゆみ

最終更新:10/15(土) 12:00

本の話WEB

Yahoo!ニュースからのお知らせ

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

北朝鮮からの脱出
北朝鮮での幼少時代、『ここは地球上最高の国』と信じていたイ・ヒョンソだったが、90年代の大飢饉に接してその考えに疑問を抱き始める。14歳で脱北、その後中国で素性を隠しながらの生活が始まる。 これは、必死で毎日を生き延びてきた彼女の悲惨な日々とその先に見えた希望の物語。そして、北朝鮮から遠く離れても、なお常に危険に脅かされ続ける同朋達への力強いメッセージが込められている。