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山口県・上関──原発計画に抵抗し続けた祝島の34年「カネは絶対に受け取らん」

週刊女性PRIME 10/15(土) 15:00配信

 瀬戸内海に浮かぶハート形の祝島(いわいしま)。人口約400人、西に大分県の国東半島、東に愛媛県の佐多岬、北に山口県の熊毛半島を望む越境的な島だ。太平洋から豊後水道を通り瀬戸内海へ入る海流が、周防灘と伊予灘へ分かれる潮の境でもある。古来、海上交通の要で、近海は豊かな漁場だ。

 その海が2011年の福島第一原発事故前、まさに埋め立てられようとしていた。祝島から約3・5㎞対岸にある上関(かみのせき)町田ノ浦は、中国電力の原発建設予定地なのだ。出力約140万kwの原子炉2基。2号機の炉心は海を埋め立て配置する。

 だが計画浮上から34年、予定地に原発はない。海もそのまま。祝島の人びとが声をあげ続けているからだ。裏を返せば、3・11後も新規立地の計画は延命。第二次安倍政権の発足後、漁業補償金の強要が再開した。

県漁協本店が「原発のための漁業補償金受け取り」を強行採決

 '13年2月、山口県漁協祝島支店が「上関原発のための漁業補償金受け取りへ」と報じられた。だが、祝島では「原発のカネは受けとらん」という声が根強い。漁師も約10億8000万円の漁業補償金の受け取りを拒んできた。周辺漁業への補償なしに、原発を造ることはできないからだ。

 だからこそ受け取りに向けた動きは巧みで、拒み続けた例は少ない。ただ祝島は'12年2月、「もう漁業補償金の話はしない」とまで決議している。

 話を聞くと、'13年2月は山口県漁協本店が招集した祝島支店の会合で、十分な説明なしに県漁協の主導で採決、受け取り賛成が多数とされたとわかった。県漁協は、組合員から事前に交付請求があっても定款規約を出ししぶり、組合員が決めるべきことにも介入するなど規約違反の手続きで、採決を強行していた。

 早くも6月には、県漁協が配分案を作ってきた。「拒否」を何回議決しても再採決を迫られたのが、「賛成」の議決は1回で配分案までできる。納得できない祝島の人びとは発奮した。

「絶対に受け取らん。海は私らのものじゃない」

「誰の海でなし。みんなの海じゃから、守らんと」と、一本釣り漁の岡本正昭さん(67)。「絶対に受け取らん。海は私らのものじゃない」。女漁師・竹林民子さん(73)も決意をにじませる。公務員を定年退職し、島内のさまざまな役を担う藤本芳子さん(76)は「漁師だけの問題じゃない」と話す。奔走が始まった。

 牽制するように、外部から懐柔や脅しが続いた。もっとも女性の多くは動じない。'10年1月から'11年3月半ばまで田ノ浦へ毎日交代で通い「中電に言われ慣れちょる」のだ。

 県漁協は、配分案の採決のため会合を4回招集したが、いずれも延期した。4回目の'14年3月は祝島総出で船着場に人があふれ、県漁協は船着場の階段を数段上っただけで帰った。

 5回目の招集は'15年4月。初めて島外の会場となった。漁業補償金を拒む祝島の漁師は、定款規約にのっとり書面で議決権を行使することにした。荒天で船が出ない場合の備えだろうか。原発事故の避難計画など、祝島には空論とわかる。

 だが県漁協は書面を受理しない。「定款を守れ」と声が飛ぶ。祝島の漁師は粘った。最終的に書面は受理され、配分案は否決された。漁業補償金の強要を2年がかりで押し返したのだ。

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最終更新:10/15(土) 15:00

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