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「3人の親を持つ赤ちゃん」が変える未来 魔法の不妊治療

Japan In-depth 10/15(土) 11:29配信

10月13、14日にニューヨークで開催されたART(Assisted Reproductive Technology:補助生殖医療)のシンポジウム。

世界中の生殖医療の専門医や、研究者たちが集まるこの会合で注目されたのがニューヨークの不妊治療専門クリニック、ニューホープ・ファーティリティーセンターの ジョン・ザン医師が発表した「3人の親を持つ赤ちゃん(Three Parent Baby)」である。「3人の親」と言っても、産みの母親と育ての母親がいる…というパターンではなく、「母親の卵子+別の女性の卵子+父親の精子」から誕生した、つまり3人の遺伝子を合わせ持つ赤ちゃんのことである。

この赤ちゃんを出産したのはヨルダン人の母親。彼女は、細胞小器官の一つであるミトコンドリアの遺伝子に欠陥がおきるミトコンドリア病(注1)を持っていた。そのため、結婚後20年の間に、子どもたち2人を幼くして亡くし、さらに4回の流産を繰り返してきた。このまま何人出産しても同じ結果になるのではと悲嘆にくれていた彼女を救ったのがジョン・ザン医師だった。

ザン医師は遺伝子疾患を持たない健康な女性の卵子から、DNAを含む細胞核を取り除き、代わりに母親の細胞核を移植。母親は今年4月に無事出産、現在、生後6ヶ月の男の子はすくすくと健康に育っているという。卵子、およびミトコンドリア内の遺伝子は、第3者の女性(ドナー)のものだが、それ以外の99%の遺伝子は母親の細胞核から移植されているため、男の子は99%、両親からの遺伝子を引き継いでいることになる。

遺伝病に苦しむカップルを助けた医師の快挙について最初に報じたのは、昨年、世界で初めて、この技術の使用を法律で許可したイギリス。New Scientistという科学誌が「世界初!3人の親を持つ赤ちゃん誕生」という見出しで大々的に報じた。

その後、全米のメディアの報道が続いたのだが、 2国間メディアの空気感には大きく差があった。というのも実はこの「3人の親を持つ 赤ちゃん」というのは、手順などに多少の違いはあるものの、 似たような手法で、すでにアメリカでは90年代に試験的に実施されていたのだ。しかし、倫理的問題などから、禁止となった過去がある。そのため、今回、ザン医師は 規制のゆるいメキシコに出向いて施術を行っており、国内では彼に対する批判の声は多い。

一方、この話題に飛びついたのは女性をターゲットにしたメディアである。女性向けデジタルメディアのジェゼベル(JEZEBEL)では、遺伝病を持った女性だけでなく、「35歳以上の不妊治療がうまくいかず苦しんでいる女性たちにとって、ジョン・ザン医師の技術はエキサイティング」だと、絶賛。また、「同性愛者たちにとっても、同性同士両方の遺伝子を子孫を残すことが可能になる日も近いのでは」と期待を寄せている。

アメリカでは、卵子提供者を募集する広告がちまたにあふれ、まるで献血に行ったかのように、「きょうは卵子を提供してきた」とブログに書く女性がいるほどである。「自身の卵子が劣化しているのなら、体外受精を繰り返すより、他人の卵子を使った方が早い」という合理的な考え方をしているとも言える。しかし、若い女性の健康的な卵子を使い、自分の遺伝子を残すことが実際な選択肢としてあるのであれば、挑戦したい女性も多いはずである。

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最終更新:10/15(土) 11:29

Japan In-depth

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

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