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地方の市職員が英会話「NOVA」買収、売却、失業から買い戻して再生させるまで

NIKKEI STYLE 10/16(日) 7:47配信

 市役所職員から裸一貫で起業、数々のM&A(合併・買収)で教育・外食の一大フランチャイズチェーン(FC)を築き上げた稲吉正樹氏。英会話教室最大手NOVAの事業を取得したことで一躍、世間の注目を集めた。しかし、時代は大きな変革期を迎え、一旦は会社売却を余儀なくされる――。NOVAホールディングス(東京・港)の稲吉社長に新生NOVAの復活劇と今後のビジョンを聞いた。
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 NOVAを承継した当時、ジー・コミュニケーションは半年後に株式公開を計画していましたが、NOVAを取得したことで、若干延期しようということになりました。
 NOVAを引き継いだことで会計上、その年に50億円の赤字を計上しなければならなくなったのです。割引料金でのレッスン提供が、受講生の債権を実質的に引き受けたことになると認定されて、それがのれん代と負債になってしまったのです。
 キャッシュフローは黒字でしたので、財務上の懸念は全くありませんでした。ただ、決算上大きな赤字になっていることが、リーマン・ショックの折、金融機関に支援をしない理由を与えてしまったのです。

■断腸の思いで売却を決断、一人で会社を去る

 当時、それまでに買収した連結会社が背負ってきた有利子負債が200億円ありました。そのうち100億円程度を1年ごとに借り換える短期借り入れでまわしており、利払いだけをする契約になっていました。ところが、借り換えのタイミングで、借入先から元本の返済を求められました。決算が大きな赤字になっているということが理由でした。リーマン・ショックで金融機関も余裕がなかったのだと思います。
 そこから1年間で100億円ほどを返済しましたが、いよいよ資金繰りが厳しくなってきました。リーマン・ショックのピークなので、支援してくれる先はなく、スポンサーとなってくれるところもありませんでした。唯一、手をさしのべてくれたのが日本振興銀行です。そして09年10月、ジー・コミュニケーションを日本振興銀行のグループ企業に売却しました。
 会社としてはまずまず堅調でしたので、私がオーナーシップを譲り、融資さえ受けられれば会社は全く問題の無い状況でした。ですから、断腸の思いで売却を決断し、私一人で会社を去りました。
 その後、ジー・コミュニケーションは日本振興銀行グループの1社として、10年4月に経営破綻した英会話教室大手「ジオス」を引き受けます。日本振興銀行から支援を受けられるというのが前提でした。ところが、その年の9月に今度は日本振興銀行が経営破綻。ジー・コミュニケーションの教育事業子会社、ジー・エデュケーションは経営が非常に厳しくなり、私のところに引き受けてくれないかという話が持ち込まれてきました。私にとって教育は創業事業でもあるので、「であれば、引き受けましょう」と買い戻しました。売却から1年後のことです。
 ジー・コミュニケーションは売却にあたり、それなりの価値を認めてもらえました。当時はその資金を元に「いなよしキャピタルパートナーズ」という会社をつくり、「これから何をやろうかな」と悩んでいるところでした。はじめから買い戻す条件で、会社を売却したということはありません。ジー・コミュニケーションにしてみれば、当時の売り上げの9割は外食。教育事業はごく一部。そこだけを買い戻したかたちです。
 赤字となっている事業ですが、立て直す自信はありました。まず、引き継いだばかりのジオスのオペレーションには大きな課題がありました。例えば、同じ駅前にNOVAとジオスの校舎が隣り合わせにあったりしました。全国でそんな感じでした。事業譲渡で会社が混乱していたのです。そこを整理していけばプラスにしかならないと。買い戻したその年は若干赤字でしたが、翌年には黒字化を実現しました。

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最終更新:10/16(日) 7:47

NIKKEI STYLE

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