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日本株が「急落するリスク」は消えていない

東洋経済オンライン 10/16(日) 6:00配信

 当コラムでは、筆者は「11月初旬に向けて内外株安と円高が進む」と語ってきた。だが、その後日経平均株価が一時1万7000円を超えるなど上振れし、米ドル円相場もたびたび104円超えを見せた。そのため、読者の皆様にご心配をおかけしたのではないかと、申し訳なく感じている。

■「株もドルも上昇!」という割に、なぜ上値が重いのか

 しかし一方で、日経平均は1万7000円台定着とは行かず、為替相場も、先週末の7日は1ドル104円台で引けているが、何度も円高方向に押し戻された。「国内株価も米ドル円相場も、一つの目安を上抜けたので、どんどん株高、円安だぁ~」と一部で騒ぐ向きがいる割には、上値が重い相場であったと言えよう。

 先週、日米の株価や米ドル円相場が一時的に下振れた材料として、大きなものとしては二つが語られていた。一つは米アルミ大手アルコアの決算であり、もう一つは、中国の貿易統計だった。

 アルコアはいつも決算発表が早く、一番乗りだが、10月11日(火)発表の7~9月期の決算においては、売上高が前年同期比6%減と減収になったうえ、1株当たり利益も事前の予想を下回り、失望を呼んだ。これが同日、ニューヨークダウ工業株指数が、前日比で200ドル強も下落した主因と言われている。

 もう一つの中国の貿易統計は、13日(木)の午前11時に発表され、これが日本株や米ドルの対円相場が急速に下振れた理由だとされている。

 なぜ市場に影響が生じたかというと、中国にとって稼ぎ頭である輸出の金額が、9月は対前年で10.0%も減少したとの報が、「輸出減の結果、中国経済がこれから悪化するのではないか」との懸念を招いたためだ。加えて、9月の輸入額も前年比で1.9%減と、8月のプラスからマイナスに落ち込んだ。これは、「中国の景気が悪いから、結果として輸入品の購買が減った」と解釈された。

「健全な常識」で予想を疑うべき

 しかし読者の方々のなかには、「確かに専門家は、アルコアだ、中国の貿易統計だ、と言っているが、何となく腑に落ちない」と感じている向きがおられるかもしれない。

 そうした違和感は、極めて正しいと考える。たとえばアルコアについては、確かに同社は米国有数の大企業の一つである。また、「決算発表のトップバッター」であるため、今後の収益動向を占う材料として、注目されやすい。とは言っても、たった一つの企業の収益が期待外れだったからといって、主要な米国の株価指数、すなわち米株式市況全般が、前日比で1%以上も下落しなければいけないものだろうか。

 中国の貿易統計についても、中国経済に対する懸念材料であることは確かだ。しかし、足元で中国楽観論が大勢であれば、同統計は驚きであっただろうが、中国経済に対する懸念は、昨年からずっと取りざたされており、「いまさら」という感が強い。この統計の弱さが、本当に急激な国内株価や米ドル円相場の下振れを引き起こすような材料だったのだろうか。

 このように、マスコミの報道や専門家による市場解説を、「本当なのだろうか」と常識的で地道な発想で疑うことは、とても大事だ(私の解説も、是非疑ってかかってください)。一見高度な解説に見えても、地道な常識による検証に耐えられない主張は、大体間違っている。そうした場合は、他に本当に市場を揺り動かした材料が、隠れているものだ。

■金利上昇が「米ドル売り要因」に化けるリスク

 では、本当に市場を動かした理由とは何だろうか(以下述べることは、単に私の考えである。真の要因はさらに別にあるかもしれないので、読者の方は、やはり常識で疑いつつ読んでください)。

 米国株価の軟調展開については、二つ要因があると考えるが、一つは、じわじわと米長期金利が上昇していることだ。金利が上がること自体は、米国景気が堅調であることの表れであり、それほど心配することはない。

 またFRB(米連邦準備理事会)は、慎重な金融政策に終始すると期待できるため、短期金利は、極めて緩やかな上昇にとどまるだろう。しかし長期金利は、市場が決めるものだ(中央銀行が決めるものだ、と主張しているどこかの国があるが)。

 突然の市場心理の変化で、長期金利が一気に跳ね上がる展開は否定できない。今は為替市場では、金利上昇は米ドル買い要因だと解釈しているようだが、長期金利の急速な上昇は長期債価格の急激な下落を意味する。すると、金利上昇が、米ドル買い要因から米ドル売り要因(米国の債券売りによる米ドル売り)に、ドロンと化ける恐れがある。現段階では、長期金利の上昇は穏やかであるが、米国株式市場は、先行き金利の上昇スピードに弾みがつく匂いを、嗅ぎ取っているのかもしれない。

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最終更新:10/16(日) 6:00

東洋経済オンライン

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