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フランス大統領の条件は名文家であること?

JBpress 10/17(月) 6:10配信

 フランソワ・ミッテラン元大統領(1916~1996、在任期間1981~1995)は、任期終了直前になって隠し子の存在と前立腺がんにかかっていることを公表した。先日(10月13日)、その隠し子の母親との愛の往復書簡『アンヌへの手紙』(ガリマール社)が発売された。

 「フランス語を知り、条件法過去が使え、隠喩的色彩を添え、文章力に長けた我々の最後の大統領」(左派系週刊誌「ヌーヴェル・オプセルヴァトール」)として、本書は高い評価を受けている。

 隠し子の存在や前立腺がんを長年にわたって隠していたのは、フランスの国家元首としては一種の裏切り行為である。だが、それよりも、フランス語の複雑な文法の時制と隠喩を駆使して立派な文章を書ける能力の方が高く評価されているというわけだ。

 来春の仏大統領選を前に、11月末には最大野党の右派政党「共和党(LR)」と中道右派の候補者7人による共同の公認候補を選出する予備選が実施される。各候補は、“文筆家”としての技量を競うかのように次々に政策をアピールする著作を発表している。新聞やテレビに取り上げてもらい、メディアに露出する機会を増やそうという狙いも、もちろんある。

■ 典型的エリート、ジュペ元首相の文章は? 

 最新の各種世論調査で予備選の1位獲得が予想されるアラン・ジュペ元首相は、2015年夏から2016年5月までの間に、自らの政策を紹介する3冊の著作を発表した。

 2015年8月に発表した第1作は、教育改革に言及した『学校への道』。今年1月には、防衛と外交問題に焦点を当てた『強国のために』。5月には『雇用のための5年(仏大統領の任期は5年)』を出版し、高失業率解消を目指す経済政策を披瀝した。

 いずれも、文章には条件法や未来法など複雑な文法を駆使し、政策綱領の合間には古今東西の名著からの引用や抒情的描写なども散りばめている。

 ジュペは、秀才校エコール・ノルマル(高等師範学校)で最難関のギリシャ語を専攻し、高級官僚養成所・国立行政院(ENA)を卒業したフランスの典型的エリートである。

 一方、支持率2位でジュペを追撃するニコラ・サルコジ前大統領は、エリート校の出身者ではない。フランス人は基本的にエリートが好きだ。そのため、サルコジ大統領は在任中から学歴、教養のなさをしばしば揶揄されてきた。ジュペは「教養」を武器にして、サルコジを引き離したいところだ。

■ サルコジの著作にゴーストライター説

 一方のサルコジは今年1月に『人生のためのフランス』を上梓。ジュペに当てつけるように、高級官僚が立派な経歴だけで労せずに高所得を獲得していることを皮肉り、自分が弁護士として汗を流して稼いできたことなどを強調した。

 また、8月末には『フランスのための全て』も上梓した。冒頭で「2017年の大統領選の候補者になることを決めた」と述べ、正式に立候補を宣言した。同書では、オランド政権下の5年間の検証を求め、イスラム教徒の女性が被るベール(ヘジャブ)の公共の場での着用禁止(現行では公共教育の場での禁止)や、旧植民地などからの移民の「家族呼び寄せ」に制限を設けるなどの移民政策も披瀝している。

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最終更新:10/17(月) 10:35

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