ここから本文です

損保ジャパンが買収する「英保険王」の正体

東洋経済オンライン 10/17(月) 5:30配信

 「ダイヤモンドを手に入れた」──。

 損害保険大手3社の一角、SOMPOホールディングス(HD)の櫻田謙悟社長は満足そうに語った。同社は10月5日、傘下の損害保険ジャパン日本興亜を通じて、米国を中心に展開する企業保険大手エンデュランス・スペシャルティHDを買収すると発表した。買収額の63億ドル(約6394億円)は、国内保険の海外買収では2015年6月に東京海上HDが公表した米HCC買収(約9413億円)に次ぐ規模となる。

この記事の写真を見る

 エンデュランスは2001年の創業ながら急成長している新興の損保会社。農作物の収穫減少や価格下落を補償する保険で全米5位であるほか、サイバー保険や賠償責任保険といった専門性の高い保険に強みを持つ。15年の純利益は3.4億ドル(約348億円)、過去10年平均ROE(自己資本利益率)も11.8%と高い。

■国内事業は先細り懸念

 日系損保の海外買収が相次ぐのは、国内事業の先行きが見通しづらいからだ。人口減少で柱の自動車・火災保険が先細る懸念がある。投資家からは収益性・成長性が高い海外展開の強化、事業リスク分散を促す声が強まっていた。

 SOMPOは世界中の複雑な損保を取り扱う英ロイズ市場でトップ10に入るキャノピアスを2014年に約1000億円で傘下に収めた。ところが、先行する東京海上は米国を中心に巨額の買収を次々と成功させている。東南アジアに強いMS&ADインシュアランスグループHDも昨年ロイズ市場で2位のアムリンを買収。両社に大きく水をあけられていた。

買収のもう一つの狙い

 今回の買収でSOMPOは最大の米国市場に念願だった基盤を獲得できる。グループ全体に占める海外保険の利益割合も12%から27%に引き上げ、東京海上(今期43%見通し)、MS&AD(同27%)を追撃する。株価は公表から2日で約1割も上昇した。

 櫻田社長が会見で「優秀な経営陣を加え、事業の変革を目指す」と語ったように、狙いの一つは2013年からエンデュランスのCEOを務めるジョン・シャーマン氏の獲得にある。

■海外事業の持ち株会社を設立へ

 シャーマン氏は英ロイズ出身で40年を超えるキャリアを誇り、自ら創業した会社を大きく育てるなどやり手で知られる。「英保険市場の王」との異名もあり、エンデュランスでも、積極的な買収戦略や専門人材採用で拡大路線の旗を振ってきた。

 SOMPOは2020年代の早期に修正連結利益3000億円という目標を掲げる。2018年度の利益は2200億円以上に積み上がる見込みだが、世界10位水準になるにはまだ足りない。

 櫻田社長は「さらなるM&Aも否定しない」としており、シャーマン氏にM&Aを含めて腕を振るわせる腹積もりだろう。そのために金融業界では初となる、海外事業を統括する持ち株会社の構想まで披瀝した。「CEOはシャーマン氏にやってもらいたい」(櫻田社長)。

 格付け会社フィッチ・レーティングス・ジャパンの森永輝樹ダイレクターによると「キャノピアスとは円滑に買収後の統合作業を進めていた」。ただ、新興のエンデュランスと老舗のキャノピアスとでは企業文化も異なる。

 相次ぐ巨額買収の先に大きなシナジーを生み出せるか。業界3位のSOMPOが躍進するためのカギとなる。

水落 隆博

最終更新:10/17(月) 5:30

東洋経済オンライン