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荒川宏、藤田和日郎ら11名のマンガ家が明かす“マンガ愛”

Book Bang 10/18(火) 8:00配信

 内容の熱さにあてられて一気読み。しかし、スピードに乗せられることにだんだん警戒心が生まれる。立ち止まってじっくり検討したいポイントがたくさん埋め込まれているからだ。本をいったん閉じては、過去のマンガ体験を思い出し、しばし瞑想。早く次が読みたくなって読書再開。その繰り返しで読みきった。

 ちばてつやや諸星大二郎など活躍期間の長いベテランから、荒川弘や岩明均など最近の大ヒット作を生んだマンガ家まで、11人に対する真剣勝負のインタビューである。「聞きたいこと」を決めて臨むのではなくて、それぞれのマンガ家が「言いたいこと」を引き出し、語らせる。名人芸だ。

 話したいように話す機会を得たマンガ家は、なにをどう語るのか。印象的なのはそれぞれの作家の「マンガ愛」だった。荒川弘は、見知らぬマンガ家でもずっと連載を読んでいるうちに「この人は信用できる」と思うきっかけについて話しているし、藤田和日郎にいたっては、すべてのマンガのなかで自分の作品が一番でありたいと気負い込んでいるのに、「実際には自分の作品よりも好きなマンガってあるわけですけど」と、好きな作品名をどんどん挙げていく。マンガ家って、とことんマンガ好きなんだなあ。どのマンガ家も他人の作品に興味をもち、目配りをしていろいろ読んでいるうえに、評価をしている。つまり、マンガというジャンルには一本の太い歴史があり、新しい人気作品はベテラン作家たちに読まれ、ちゃんと歴史の最新ページのなかに位置づけられていくのだ。拡散していない、求心力の強いジャンルの頼もしさが伝わってくる。

 マンガ世界のこうした魅力を表現した点でこの本は非凡だし、インタビューの可能性をも見せつける。他者の作品がマンガ家のやる気をあおり、マンガ家の熱気が読者の心にも火をつける連鎖。「幸福」って、こういうことですよね。

[レビュアー] 渡邊十絲子(詩人)
※「週刊新潮」2016年10月6日号掲載

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最終更新:10/18(火) 8:00

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