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オリバー・ハート教授のノーベル経済学賞受賞によせて(中泉拓也 関東学院大学 経済学部教授)

シェアーズカフェ・オンライン 10/18(火) 5:37配信

2016年のノーベル経済学賞の受賞者がハーバード大学のオリバー・ハート教授とマサチューセッツ工科大学のベント・ホルムストローム教授の二人に決まりました。

後者のベント・ホルムストローム教授は、モラルハザードやアドバースセレクションといった、情報の経済学や契約理論における核となる研究をされていらっしゃいます。まさに正統中の正統、一昨年に受賞されたティロール教授と並び、ゲーム理論の応用分野の中でも、最も重要な分野で、既に70年代後半から成果を出してこられました。

特に人々が多数で成果を出すような生産体制において、それぞれの努力がわからないという情報の非対称性がある場合、すなわちチーム生産特有のモラルハザードの問題を定式化した研究が有名です。個人的には、過去の受賞者と比べても、ホルムストローム教授が受賞するのは全く違和感がありません。

そういう意味での業績としては、ハート教授が受賞するのも全く違和感がありません。それだけの多大が業績を残されています。また、実はこの分野で博士論文を書き、この分野を未だに研究している小職にとっては正直喜びもひとしおです。

しかしながら、ハート教授の受賞理由である不完備契約理論には、様々な苦難の道がありました。正直、私が博士論文をまとめていた2000年前後には、実はこの理論が世界的に日の目を見ることはないのでは?と諦めていたほどです。

それが今回の不完備契約理論が受賞理由の一つとなったのは、その後のハート教授自身の精力的な研究に加え、その理論的な進展、そして、多くの発展的な研究がありました。

2015年に他界され、1994年にノーベル経済学賞を受賞されたジョン・ナッシュ教授は、理論的な貢献としてノーベル賞を受賞することは誰も意義を唱えないでしょう。むしろその後の氏の半生に紆余曲折があり、その劇的な半生はビューティフルマインドという小説にもなり、映画化され、アカデミー賞作品賞も受賞しました。

そういった半生の紆余曲折とは異なり、理論の頑健性に関してノーベル賞に値するかは、文学的には脚光を浴びないものの、当事者としてはもっと切迫した話です。小職は、ハート教授ご自身とは面識はありませんが、この分野で研究をさせていただいている研究者として、ここでは、そういった紆余曲折を紹介したいと思います。

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最終更新:10/18(火) 5:52

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